主催:関東支部 企画総務グループ
主担当:東京大学 東畑郁生
平成25年2月28日16時半~18時,地盤工学会地下大会議室にて標記の講演会が開催されました.当日は,International Institute of Information Technology Hyderabad (IIIT) Earthquake Engineering Research Center のDr. Neelima Satyamに御講演を頂き,民間・大学などから18 名の方々に御参加を頂きました(写真1).
ご講演の前半は 2001年1月26日にインド西部グジャラート地震で発生したインド西部地震の被害状況について説明がなされました.当時,インドでは耐震設計という概念自体が一般的ではなく,この地震により多くの建物が崩壊し,多数の犠牲者が出たとのご説明でした.また,液状化の被害も報告されており,アースダムについて,その堤体自体は施工時に十分な締め固めがなされ地震時も健全性を保っていたものの,その下にある支持地盤が液状化を起こしたために停滞が崩壊に至った事例などが紹介されました.この地震契機に,インドでは構造物に対して耐震設計基準の作成,地震工学や災害軽減のための研究,一般市民への防災・減災教育などが始められたとのことでした.
講師はこれらの研究活動の一環として,現在東京大学の土質/地盤研究室にてインドの南東部のVijayawada市の地震応答解析および液状化危険度評価に取り組んでおられ,後半はその研究成果についてのご報告を頂きました.まず,研究対象であるVijayawada市の地形・地質・ボーリングデータなどについてご紹介を頂きました.次に,各地点の表層地盤構造を考慮した地震動増幅特性について,中村等が提唱した方法1)に従い常時微動から求めた増幅特性と,東大土質/地盤研にて作成された,地震動周波数によって異なるせん断剛性低下率(G/G0),及び減衰比(h)を用いて地震応答を計算するプログラム2)により求められた増幅特性との比較検討を行った結果が示されました.地盤の持つ固有周期については,両者から求められた値がほぼ一致するものの,増幅率については応答解析の方が常時微動から求めたものより小さい値を示すという結果が得られており,これまで他の地点で行われてきた研究事例と一致する結果になったとのことでした.また,この地震応答解析結果を基に評価した,当該地域の液状化についてのマイクロゾネーションが示されました.
ご講演後は会場と間で活発な質疑応答がなされました(写真2).前半の災害事例については,インドにおける現在の耐震基準の作成・公布状況についてご質問を頂き,講師より順次基準の改訂・作成は進んでいるものの,この基準改定前に作られた既存不適格構造物が数多く現存しており,これらへの対応が課題であるとの説明を頂きました.また,防災教育の重要性について会場よりご指摘を頂きました.後半の地震応答解析に関しては,今回の検討に用いられたインドにおけるSPT試験の状況や,不攪乱試料による要素試験の内容についてご質問を頂きました.この他に,今回行われた液状化のマイクロゾネーションについて,この地域が沖積平野に該当するため,ボーリングデータを用いた応答解析による評価では大部分が液状化危険性有りと評価されてしまい実務上不十分であること,実情を反映するためには,さらに地盤の年代効果などを考慮に入れることが必要ではないかといったご意見を頂きました.
最後になりましたが,貴重なご講演を頂きましたNeelima講師,および当日のディスカッションにご協力頂きました参加者の方々に対し深く御礼申し上げます.
写真 1講演の様子 写真 2会場とのディスカッション
写真 3講師への感謝状授与
(参考資料)
1) Yutaka Nakamura: Clear identification of fundamental idea of Nakamura’s technique and its applications, 12WCEE, 2000
2) Takaharu Ito and Ikuo Towhata : Dynamic analysis of ground with rigorous use of strain dependency and its application to seismic microzonation of alluvial plane, Natural Hazards Journal, Vol. 64, No. 2, pp. 1079-1104, 2012