第14回 関東支部発表会(GeoKanto2017)の開催報告
関東支部 支部発表会グループ
リーダー幹事 北誥昌樹(東京工業大学)

 1.はじめに
 公益社団法人地盤工学会関東支部では,社会へのより一層の貢献を目指し, 一般からの参加を促すプランを加えた形式の関東支部研究発表会を第9回発表会(2012年)から第13回発表会(2016年)まで日本科学未来館で開催して来ました.支部発表会(GeoKanto2017,以下)は,このコンセプトを継承しつつ久しぶりに都内を離れ,餃子,カクテルとジャズの街,栃木県宇都宮市の栃木県総合文化センターの3階の会議室5部屋で2017年11月17日(金)に開催しました.GeoKanto2017では一般発表のほかに,栃木県県土整備部長江連隆信氏による「日光・会津・上州歴史街道対流圏の強化プロジェクト」に関する基調講演や関東支部の研究委員会報告,栃木県の話題に関するセッションなどが実施されました.なお,基調講演と栃木県の話題に関するセッションは,公益社団法人土木学会関東支部 栃木会の共催を得ての開催でした.このたびの発表会の投稿編数は145編、参加者数は329名でした.発表会の後の意見交換会も開催致し,名物の餃子や地酒などで楽しんでいただきました.参加者数は115名でした.
2.発表会の実施について
 145編の発表論文を朝9時30分から、5つの会場で、構造、防災、環境などに分類されたセッションで並行して発表をすすめ、各部屋で午前中2セッション、昼休みを挟んで2セッションでの合計20セッションで運営しました(写真-1)。1セッションあたり、6~8編の発表をしていただきました。これらのセッションの中には、関東支部で活動をすすめている研究委員会活動報告セッションや、栃木県県土整備部長の江連様の基調講演(写真-2)と栃木県内の自治体や栃木県グループに関する話題をご発表していただいた栃木県セッションなどが含まれています。各セッションとも学生の発表件数が多いのが特徴ですが、研究を始めたばかりのテーマやかなり成果が挙がり、完成度が高いテーマについて、多様な発表が行われました
3.おわりに
 研究発表会終了後、同じ建物の2階のレストラン「ORIENTAL CAFE&BAR 「LOKANTA!」」で懇親会を開催し、研究発表会で質問しきれなかったことの議論の続きをしたり、久しぶりの仲間の集まりを楽しんだりと、それぞれの立場で多くの方が集う活気のある会となりました。
 来年度は、再び会場を東京に移して、GeoKanto2018が開催されますが、GeoKanto2017の熱気そのままに、関東支部の中心イベントとして、さらなる活発な交流の場となることを期待します。

     表1.関東支部発表会の開催概要

回数
年度
開催場所
参加者数
論文数
第1回
2004
 東京都文京区(JGS会館)
53
26
第2回
2005
 茨城県水戸市(茨城大学)
86
52
第3回
2006
 神奈川県横浜市(関東学院大学)
205
111
第4回
2007
 群馬県前橋市(県市町村会館)
187
126
第5回
2008
 千葉県船橋市(日本大学)
174
117
第6回
2009
 栃木県宇都宮市(県総合文化センター)
232
147
第7回
2010
 埼玉県さいたま市(大宮ソニックビル)
194
131
第8回
2011
 山梨県甲府市(ぴゅあ総合)
184
132
第9回
2012
 東京都江東区(日本科学未来館)
402
197
第10回
2013
 東京都江東区(日本科学未来館,東京国際交流館)
約310
186
第11回
2014
 東京都江東区(日本科学未来館,東京国際交流館)
約300
170
第12回
2015
 東京都江東区(日本科学未来館)
約300
163
第13回
2016
 東京都江東区(日本科学未来館)
約300
142
第14回
2017
 栃木県宇都宮市(栃木県総合文化センター)
329
145

    表2.実行委員会委員

副支部長兼
グループリーダー
 北誥昌樹(東工大)
学術部会
 リーダー:森鼻章治(不動テトラ)
 堤彩人(五洋建設)
 堀越一輝(東工大)
 重村智(日大)
 原弘典(中央開発)
総務部会
 リーダー:清木隆文(宇都宮大)
 喜内敏夫
(栃木県地質調査業協会)
 植村一瑛(応用地質)
 浅香康弘(鹿島建設)
 林健太郎(五洋建設)
 宮崎基浩(芙蓉地質)
 新屋麻美
(アサノ大成基礎ENG)
 青木美智子(地盤工学会)
企画部門
 リーダー:西村友良(足利工業大)
 喜内敏夫
(栃木県地質調査業協会)
 永野通夫(栃木県建築士会)
 鶴田英幸(東京ガス)
県連絡委員
 松島亘志(筑波大)
 後藤聡(山梨大)
 早野公敏(横浜国大)
 鎌尾彰司(日大)
 斎藤健志(埼玉大)
 山中光一(日本大)
 蔡 飛(群馬大)

    

            写真1. 発表会の様子            写真2. 県土整備部長への感謝状表彰

第14回 地盤工学会関東支部発表会 優秀発表者賞

構造1

冨安祐貴(大林組)「ソイルセメント柱列壁を本設杭として利用した基礎構造の地震時挙動とその評価法に関する検討」
 この度は優秀発表者賞に選出いただき、誠に光栄に存じます。本研究では、主として仮設利用されるソイルセメント柱列壁の本設杭利用に関する検討を行っております。今回は、遠心模型実験による地震時挙動の検証とその解析手法について発表させていただきましたが、得られた知見を実務の設計へと結実させるためには、実大スケールにおける検証結果も取り入れながら、より実現象に即した解析手法を提案する必要があると考えております。今回の受賞を励みに、今後の検討へ力を注いでいく所存です。
 本発表を行うにあたりご協力、ご指導を賜りました皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
構造2
松本亜里紗(鹿島建設)「鉄道橋の既設木杭基礎橋脚の周囲に施工する鋼矢板の計画・施工実績」
 この度は、第14回地盤工学会関東支部発表会において優秀発表者にご選出いただき、誠に光栄に思います。今回は、木杭基礎の周囲に鋼矢板を圧入することによる沈下量の事前予測、計測管理値の設定、安全性確保の対策工の検討について発表致しました。今後、このような施工を行う際の参考になると幸いです。
 最後に、本発表にあたり、多くの方々からご支援とご助言を頂きました。心より感謝を申し上げます。
構造3
小林貴瑠(東京理科大学大学院)「表面にジオグリッドを敷設することによる表流水に対する地盤材料の吸出し低減効果の検討」
 この度は、第14回地盤工学会関東支部発表会において優秀発表者に選出していただき、誠に光栄に思います。
 本研究ではGRS防潮堤の表流水における、ジオグリッド補強材の吸出し低減効果に着目し実験を行いました。今後は、更に研究を重ねていき、最終的にはジオグリッドの効果を定量的に評価していく予定です。
 最後に、本研究を行うにあたって指導していただいた菊池喜昭教授をはじめ関係者の皆様には、数々のご指導していただいたこと、ここに厚くお礼申し上げます。

構造4
荒木大輝(山梨大学大学院)「MRIを用いた層構成地盤の浸透挙動評価に関する研究」
 この度は、第14回地盤工学会関東支部発表会において優秀発表者賞にご選出いただき、誠に光栄に思います。
 本研究は,層構成地盤における層境界で生じる複雑な浸透挙動に着目し,これを可視化することで,浸透メカニズムや層境界における土砂災害のリスク評価,予知・予測を行うことを目的としています。今後も継続的に試験を行い,浸透メカニズムの解明に邁進していきたいと考えています。
 最後に,本研究の発表にあたり,関係者の皆様には貴重な御意見や御助言をいただきました。心より感謝を申し上げます。
防災1
蘇綾(中央開発)「平成28年熊本地震被災斜面における多点計測による傾斜変位及び土壌水分変化の長期観測事例」
 この度は、第14回地盤工学会関東支部発表会優秀発表者賞に選出していただき、大変光栄に存じます。地震被災斜面の表層傾斜変位を多点的・長期的に計測した事例について発表しましたが、この観測では斜面の亀裂近傍のいくつかの観測点に傾斜角度の変化があることが認められ、斜面崩壊早期警報における表層傾斜角度の監視の有効性を再度裏付けし、また多点計測の重要性を示唆しました。発表を通じて残された課題も明らかになったため、今後の研究に生かしたいと考えております。本研究の関係者の皆様、また本発表にあたりご助言を頂きました皆様に、心より感謝を申し上げます。
防災2
池谷真希(東海大学)「草本根系の地盤補強効果に関する基礎実験」
 この度は第14回地盤工学会関東支部発表会GeoKanto2017におきまして優秀発表者賞にご選出いただき、大変光栄に存じます。本研究は、法面緑化に利用される草本根系の地盤補強効果を簡易な一面せん断試験によって評価しようとするもので、在来植物と外来植物の違い、生育環境ならびに生育期間の影響について調べています。生物であるが故の試料準備の難しさがありますが,この分野の研究成果は十分とは言えませんので、今後も研究に邁進していく所存です。本研究を行うにあたりご指導頂いております、杉山太宏先生ならびに諸先輩皆様に心より感謝申し上げます。
防災3
原千明(東京電機大学大学院)「東京の溜池付近に分布する谷底低地に対する二次元地震応答解析」
 この度は、第14回地盤工学会関東支部発表会にて優秀発表者に選んでいただき、大変光栄に思います。
本研究は東京中心部に堆積する谷底低地を対象に地震応答解析を実施し、地震時の応答特性について検討したものです。
 今後も解析対象地点を増やすなどして、より詳細な検討を行いたいと考えております。
 研究を行うにあたり、ご指導頂いた東京電機大学・建築都市環境学系の安田先生、石川先生、基礎地盤コンサルタンツ株式会社の岡田氏をはじめ、関係者の皆様に心よりお礼申し上げます 。
防災4
根布谷有美(東京理科大学大学院)「年代効果による履歴の液状化強度とせん断弾性係数に及ぼす影響」
 この度は、GeoKanto2017において優秀発表者賞にご選出いただき、誠にありがとうございます。
 本研究では、液状化強度に影響を与える年代効果の一つとして過圧密履歴に着目し、履歴が液状化強度とせん断弾性係数に及ぼす影響の検討を行いました。今後は、年代効果の物理的要因として排水繰返しせん断履歴、非排水繰返しせん断履歴の付与による影響の検討を行っていく予定です。
 最後に、本研究を発表するにあたり、塚本良道教授をはじめ多くの皆様からご支援・ご指導を賜りましたこと、ここに御礼申し上げます。
防災5
山本馨(早稲田大学)「高濃度薬液固結砂の長期強度特性および針貫入試験による強度推定について」
 この度は、第14回地盤工学会関東支部発表会において優秀発表者賞にご選出いただき誠に光栄に思います。本研究では薬液固結砂の適用範囲拡大を目指し,シリカ濃度を高めた薬液改良体を360日という長期間にわたり養生し強度特性を確認、さらには針貫入試験により、より簡易的且つ迅速に強度評価が行えることを目的としております。今回の受賞を励みに、今後さらに実験を積み重ねていきたいと考えております。最後になりますがご指導いただいている赤木教授を始め、関係者の皆様には深く感謝申し上げます。
材料1
吉富隆弘(東海大学大学院)「一次圧密中の二次圧密挙動とH2則」
 この度は、第14回地盤工学会関東支部発表会にて優秀発表者にご選出いただき、誠に光栄に存じます。本研究は、一次圧密中の二次圧密挙動について、二次圧密発生開始時間を仮定し、層厚の増加に対してはH2乗則を適用した沈下量計算を行い、標準圧密試験結果と分割型圧密試験結果への適用性を検討したものです。
 最後に、本研究を行うにあたり、杉山太宏教授をはじめとする関係者の皆様からご指導ご鞭撻を賜りましたこと厚く御礼申し上げます。
材料2
正岡翔(山梨大学大学院)「伊豆大島における降下火山砕屑物の含水比と一面せん断特性に関する研究」
 このような賞をいただき、大変光栄です。この賞は私の力だけでなく、ご指導いただきました後藤先生をはじめ、ともに研究してきた地盤工学研究室の皆様のお力添えがあったからこそ受賞することができました。深く感謝いたします。今回の受賞を励みに、よりいっそう研究に邁進していきたいです。
材料3
金井勇介(東京電機大学)「繰返し圧密履歴を受けた砂質土の液状化強度特性」
 この度は、第14回地盤工学会関東支部発表会において優秀発表者に選出していただき、誠に光栄に思います。本研究では、地盤内の応力変化が砂質土の液状化特性に与える影響を検討した内容になっています。今後は様々な砂材料についてこの影響を検討する予定です。
 最後になりますが、本研究の発表にあたり、関係者の皆様には貴重なご意見やご助言をいただきました。心より感謝申し上げます。
材料4
上村健太郎(東京都市大学大学院)「微粒子の浸透可否評価に関する検討」
 この度は、第14回地盤工学会関東支部発表会におきまして優秀発表者賞にご選出いただき、光栄に思います。本研究は、懸濁型注入材の簡易的に浸透可否評価を行うことを目的として行いました。今後も、日々邁進していくとともに、将来的には、実施工における評価法の一つとして確立できればと考えております。
 末筆となりましたが、本研究を発表するにあたり、指導教員である末政直晃教授、伊藤和也准教授、強化土エンジニヤリング(株)の佐々木隆光氏、佐藤工業(株)の永尾浩一氏には様々なご指導を頂きました。心より感謝申し上げます。本当に有難うございました。
材料5
今井健人(早稲田大学)「放射線遮蔽性能を有する超重泥水セメント固化処理土の開発における予備的調査」
 この度は、優秀発表者賞にご選出いただきまして大変光栄に存じます。放射線遮蔽性能を有する超重泥水セメント固化処理土の開発における予備的調査について発表いたしました。今後は超重泥水セメント固化処理土を福島第一原子力発電所の廃炉措置に資する材料として活用できるよう研究を進めていく所存でございます.最後に指導教授の小峯秀雄教授をはじめ多くの皆様からご支援・ご指導を賜りましたことをこの場を借りて御礼申し上げます。
環境1
柿原結香(東京理科大学大学院)「製鋼スラグを混合した粘性土の力学特性」
 この度は、第14回地盤工学会関東支部発表会において、優秀発表者にご選出いただき、誠に光栄に思います。
 本研究は、浚渫土と製鋼スラグを混合することで硬化する性質を、有効利用率が低い建設汚泥にも応用し、混合土を地盤材料として高度利用することを目指したものです。今後は、トンネル工事から発生する建設汚泥に着目し、その混合土の力学特性等を検討していく予定です。
 最後に、本研究の発表にあたり、指導教員である菊池喜昭教授をはじめ多くの皆様からご支援、ご指導を賜りましたことをこの場を借りて御礼申し上げます。
環境2
鈴木明日香(茨城大学)「キャピラリーバリア型覆土に用いる細粒土に関する検討」  
 この度は第14回地盤工学会関東支部発表会において優秀発表者賞にご選出いただき,大変光栄に存じます。本研究では廃棄物最終処分場に用いるキャピラリーバリア型覆土において,材料特性に着目し,最適な細粒土の検討を行いました。検討結果を踏まえ,実験により設計指針となる材料の選定方法を明確にしていきたいと思います。
最後に,本研究の発表にあたり,ご指導いただいた先生方および研究室の皆様に心より感謝申し上げます。
環境3
柳田匡慶(宇都宮大学大学院)「非塑性シルトの粒子形状の違いによる繰返しせん断作用下での圧縮特性の比較」
 この度は,第14回地盤工学会関東支部発表会優秀発表者賞に選出していただき,心から感謝申し上げます。本研究では繰返しせん断作用下における土の体積圧縮特性を研究しており,様々な工学性質を持つ土を用いて実験を行っております。本学会ではその中でも非塑性シルトに着目し,発表させていただきました。発表した内容もまだ不十分な点がございますので,今後の研究でより詳細にして行きたいと思います。
 最後に本研究にあたりましてご指導賜りました宇都宮大学,海野寿康准教授,五洋建設株式会社の熊谷隆宏様,上野一彦様はじめ関係者の皆様に感謝申し上げます。
その他
花上遼太(東京都市大学)「スクリューオーガを用いたSDS試験による貫入実験」
 この度は、第14回地盤工学会関東支部発表会において優秀発表者賞を賜り、誠に光栄に思います。本研究は,既存のSDS試験機本体に手を加えることなく,先端のスクリューをオーガに変更し,貫入能力を向上させ,従来では貫入不能となるような硬質な地盤の土質判別を試みています.最後に,本研究の発表にあたり関係者の皆様には貴重なご意見やご助言を賜りました.心より感謝の意を申し上げます.
栃木県
大森智志(栃木県県土整備部)「上塩原地区における地すべり対策事業の実施について」
 この度は第14回地盤工学会関東支部発表会におきまして優秀発表者にご選出いただき大変光栄に思います。
今回、平成27年9月の関東・東北豪雨で発生した地すべりの被災状況、発生機構の解明及び対策工事について発表させていただきました。
本発表を通じて、地すべりに関する技術と経験を広く技術者間で共有し、伝えていくことが重要であると実感しております。
最後に、本発表にあたり、関係者の皆様から多くのご支援とご助言を頂きました。心より感謝を申し上げます。