「無機・有機系改質材による発生土の改質とその利活用の普及・高度化の取り組みに関するシンポジウム」開催報告

関東支部 無機系吸水性材料を用いた土の
改質技術の利活用に関する研究委員会
委員長 早野 公敏(横浜国立大学)

 2024年12月6日(金)に、JGS会館地下大会議室において、研究委員会の成果普及活動の一環として「無機・有機系改質材による発生土の改質とその利活用の普及・高度化の取り組みに関するシンポジウム」を開催しました。本シンポジウムでは、研究委員会がこれまで蓄積してきた知見を基に作成した「無機系吸水性材料を用いた土の改質技術に関する手引き(案)」の紹介と討議、公募論文の講演および意見交換が行われました。
 研究委員会では、セメント処理土のように固化するのではなく、塑性・半固体状の特性を持つ無機系吸水性材料を活用した改質土の利活用に関する課題解決に取り組んできました。この研究成果を実務に反映するため、①改質材の吸水性能評価と合理的添加率の決定方法、②改質土の設計における強度の考え方、③環境親和性および安全性の評価手法などのテーマに基づき「手引き(案)」を作成しました。特に改質土特有の性質であるコンシステンシーや締固め特性を考慮した調査・設計・施工の一体的な指針として、現場実務に即した内容に重点を置いています。
 シンポジウムでは、手引き(案)の「共通編」、「PS灰系改質材編」、「バイオマス(PKS)灰系改質材編」、「再生石膏系改質材編」にわたる各編について説明が行われ、その後、改質土の用途、現場での適用事例、課題などに関する討議が行われました。続いて行われた18編の公募論文の講演では、木質バイオマス灰、高吸水性炭化材、製鋼スラグ、酸化マグネシウム、再生半水石膏、高分子凝集剤・吸水剤、古紙微細加工粉体、ペーパースラッジ灰などの多様な材料を用いた改質技術を用いた研究成果や実務事例が紹介されました。講演後には、改質土の特性や技術の適用性に関する活発な意見交換が行われ、知識共有が一層深まりました。
 持続可能な社会の実現や脱炭素社会への移行が求められる中、多様な改質技術の発展と利活用は、今後ますます重要な課題となります。本シンポジウムでは、最新の研究成果や実務の取り組みが共有されるとともに、実務者や研究者間で活発な議論が交わされました。委員会が作成した「手引き(案)」と本シンポジウムを通じた知見の共有が、吸水性材料を用いた改質土の合理的な利活用を促進し、この分野における新たな展望を切り開くことを強く期待しています。

写真-1 手引き(案)の紹介の様子 写真-2 講演論文への討議の様子