「那須野が原現地巡検および勉強会」の参加報告

関東支部 栃木県グループ委員
委員 河野 重範(栃木県立博物館)

 栃木県グループでは、毎年1、2回程度の現地巡検や勉強会を企画している。今回は、令和5(2023)年9月28日13時~17時に、栃木県北部の那須野が原扇状地の地形や地質・地盤をテーマとし、合わせて歴史的な背景も学ぶ行事を行った。前半の勉強会では、那須野が原博物館を会場に那須野が原扇状地の地形地質に関する講演とその開拓史に関連した常設展示の解説、後半の現地巡検では大田原市内の地形地質を見学した。当日は、県内会員を中心に21名が参加し、遠くは埼玉県や群馬県からの参加者もいた。本稿では、その催しの様子を紹介したい。
 講演は、「那須野が原の地形・地質」と題し、講師は那須野が原扇状地の地形地質に詳しい栃木県立博物館名誉学芸員の青島睦治氏が務めた。はじめに、那須野が原扇状地の地形地質の詳しい調査研究を行った提橋昇氏について紹介された。提橋氏は栃木県立博物館開設準備室時代の青島氏の上司でもあり、筆者としては当時のエピソード交えた話を興味深く聞くことができた。その後、那須野が原の地形区分、地質断面と地下地質、主要河川沿いに見られる地層の層序、そして扇状地を構成するそれぞれの地層の特徴などについて、多くの図や写真を用いて説明が行われた。那須野が原扇状地は、約100万年間にわたって堆積や侵食を繰り返しながら形成され、いくつもの地下谷の存在も確認されている。現在は平坦な地形が多く露頭は少ないため、地下の層序や地質分布を知るためには、地表踏査だけでなくボーリングによる対比が重要であるということを指摘された。参加者は皆熱心に聴講していた(写真-1)。
 常設展示の解説は、那須野が原博物館館長の松本裕之氏によって行われた。那須野が原に見られる縄文遺跡や明治以降から始まった開拓史について、約30分という限られた時間の中で解りやすい説明をしていただいた。
 現地巡検は、青島氏の案内により、那須野が原博物館から車で30分程離れた大田原市内まで移動して行われた。見学地は、滝沢地区の不動の滝、田谷川水源地の湧水、宇田川地区の不動滝(写真-2)の順に3ヶ所を巡った。これらはいずれも扇状地の扇端に位置し、扇端付近に分布する境林層や那須層の累重や岩相、伏流水の湧水の様子などを青島氏の解説の下に観察することができた。

写真-1 那須野が原扇状地に関する勉強会の様子 写真-2 現地巡検の様子(大田原市宇田川地区の不動滝)