足尾銅山関連施設見学会 開催報告

関東支部 栃木県グループ
幹事・大野孝二(飛島建設(株))

 1.はじめに 栃木県日光市足尾町にある足尾銅山は、1610年(慶長15年)に江戸幕府の御用銅山となったのち、1877年(明治10年)古河財閥の創始者である古河市兵衛が買収・経営に着手してからは、大鉱脈の発見等により産銅量が日本一になるなど1973年(昭和48年)に閉山するまで多くの銅を産出してきた。その間、歴代の経営者らは西洋の最先端技術の導入、選鉱所や製錬所、水力発電所の建設により銅山の近代化を図るとともに、沈殿池(浄水場)やたい積場、煙害防止のための脱硫塔などを設置して鉱毒被害の拡大抑制にも努めた。現在老朽化した施設は解体・撤去されたが、その中多くの関連施設が文化財や史跡として保存されている。栃木県グループでは令和4(2022)年7月22日(金)に地盤工学的な視点から価値のある施設を中心に見学会を実施した。参加人数は、栃木県グループの関係者10人であった(写真-1)。
 2.見学内容の紹介 当日見学した施設は、見学順に古河足尾歴史館、通洞変電所、宇都野たい積場、小滝坑跡、本山動力所、古河橋、足尾環境学習センター、古河掛水俱楽部であった。古河足尾歴史館では長井名誉館長に館内を案内していただいた。歴史館は、関連施設の模型、採掘に使用したさく岩機、当時の写真などの展示をもとに足尾銅山の歴史を紹介している。加えてこの地で採掘された銅鉱石やその他鉱物も展示されており足尾の地質を知るうえでも参考となる施設であり、短時間での見学では見切れないほどの多くの展示物があった。宇都野たい積場は鉱山施設特有の土木構造物で、採掘された鉱物を製錬する際に生じる溶融物質(足尾では主に銅を製錬するに際に生じる鉱さい)を貯めるための堰堤の役割がある。現在は耐震性評価に基づいた補強が施されている。小滝坑は本山坑、通洞坑とならぶ足尾銅山の代表的な坑道のひとつで、現在は坑口のみが見学できる。これらの3つの坑道は鉱脈を有する備前楯山(標高1,273m)の地中深くでつながっており坑道のスケールの大きさが伺える。本山動力所はさく岩機の動力源である圧縮空気を送るためのコンプレッサー室で、内部には当時としては国内最大の出力を誇る大型コンプレッサー(写真-2)が展示されており、最新技術を導入して採掘を行っていたことが良くわかる施設のひとつである。その他の関連施設については紙面の都合で割愛するがいずれも興味深い施設ばかりであった。これらの施設は古河機械金属(株)で管理されているものがほとんどであり、見学に際して非公開施設への訪問など足尾事業所の山﨑所長には大変お世話になった。
 3.おわりに 今回の見学会は、コロナ禍ではあったが足尾銅山の歴史を垣間見る非常に有意義な見学会となり、秋に実施予定の参加対象枠を広げた見学会に向けて良い検討材料が得られた。

写真-1 古河足尾歴史館での集合写真 写真-2 本山動力所内の大型コンプレッサー