1.はじめに 独立行政法人水資源機構では、思川(おもいがわ)開発事業として思川の支川、南摩川に南摩ダムを建設し、洪水調節を行うとともに、思川支川の黒川、大芦川と南摩ダムを導水路で結び、水を融通しつつ効率的に水資源開発を行う事業を進めている。栃木県グループでは、令和3(2021)年10月18日(月)に水資源機構のご厚意でロックフィルタイプのダム堤体の岩盤基礎部分とTBM(Tunnel Boring Machine)で掘削が進められている送水トンネルおよびシールド工法で掘削が開始されようとしている導水路トンネルの建設現場を見学させて頂く機会を頂いた。この度の見学会は、新型コロナウィルスの蔓延防止のための緊急事態宣言などが解除された直後でもあり、慎重に開催するために定員を制限し、栃木県グループおよびその関係者のみを参加対象として募った。参加者は7名であった。
2.見学内容の紹介 見学会当日は、前日までの雨が嘘のようで快晴に恵まれ絶好の現場見学日和となった。水資源機構思川開発建設所からは竜澤所長、阪元副所長をはじめとする5名の職員の方々が見学会の実施に対応し、現場間の移動にはバスを提供いただいた。特に今回の見学は地盤工学会関東支部からということもあり、各所で地質に関連した資料や岩石試料をもとに丁寧な説明を受けた。参加者からの質問についても丁寧に対応して頂いた。南摩ダムは、コンクリート表面遮水壁型ロックフィルダムとしては国内ではじめての本格的なもので、堤高86.5m、総貯水容量5100万m3の規模で、令和6(2024)年度に完成を目指して建設が進められ、工事はあと約2年半で完了する予定とのことであった。現在、ダム基盤となる岩盤掘削が行われていた。見学会当日は、ダムを支える砥石型頁岩とチャートの基盤岩の岩相(写真-1)、ダム堤体上流側の基盤を掘削して設置される監査廊であるプリンスの工事を見学させて頂いた。ダム堤体を支える堅牢な岩盤の露頭を見学する良い機会となった。広大な建設現場の中で、今後、ダム堤体建設地から上流にある原石山から玄武岩主体に採掘し,堤体を盛り立てる過程について説明を受けた.ダム本体の工事現場から下流には比較的近いところに民家も点在し、小学校もある等、大規模な建設現場が人々の生活に近接した場所にあり、人々の日常生活とともにある現場であった。また現在、思川の支川である黒川、大芦川の流量が多い時に南摩ダムに導水し、一方、黒川、大芦川の流量が少ない時に南摩ダムから水を補給するための約13kmの導水路・送水路トンネルの工事も進められており、今回、大芦川取水放流工の工事現場(写真-2)も見学させて頂いた。
3.おわりに この度は、水資源機構思川開発建設所のご厚意で、コロナ禍の中、限られた時間ですが、多岐にわたるダム建設工事を地質に重点を置き見学させて頂く良い機会となった。
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