1.はじめに
平成30年度の地盤工学会関東支部栃木県グループ主催の講演会は「人工知能(AI)の最先端と地盤工学への応用」と題して,10月12日に宇都宮市東活動センターの大ホールで開催されました.現在,国土交通省の主導で,i-constructionやCIMなど,3次元計測したデータを用いた維持管理の実用化が進められていますが,その先には,人工知能(AI)の活用も期待されます.そこで今回共催を宇都宮市建設技術協会,公益社団法人 土木学会関東支部栃木会,一般社団法人 栃木県地質調査業協会に,また後援を公益財団法人 とちぎ建設技術センター,一社社団法人 栃木県建設業協会及び栃木県土木施工管理技士会に賜り開催いたしました.参加者数は56名でした.
2.講演について
評議員・栃木県グループ幹事の林健太郎様(五洋建設技術研究所・所長)に開会の挨拶をいただいた後(写真-1),講師の先生方に,基調講演および2件の事例紹介を講演して頂きました.
(1) 基調講演「AIの概要と土木分野への活用」合同会社アイキュベータ 松田 雄馬 氏:現在言われているAIが,「統計的機械学習」というキーワードに代表される方法に総括され,世の中で言われている様に人々の仕事を奪うというものではなく,人々と共存してゆくものであることが説明されました(写真-2).大量のデータをこれまで人間が見てきた視点と異なる点を把握することが期待できるようです.ただ,これまでの百戦錬磨の技術者の経験をカバーするにはAIは発展途上の様です.
(2-1) 事例紹介1「表面波探査による地盤情報の見える化」五洋建設株式会社技術研究所 上野 一彦氏: かけやなどで地盤をたたいて発生させた表面波の伝播を活用して,海底の地盤中の速度分布を推定し,そこから地盤の硬軟を推定する方法について説明が行われました.海底の表面波測定に海底面に這わせた間隙水圧計を用いることが斬新に思いました.この手法の適用範囲について会場から質問が出てきました(写真-3).
(2-2) 事例紹介2「AI,画像処理技術を利活用したトンネル切羽地質状況自動評価システムの構築」株式会社安藤・間 宇津木 慎司氏:トンネル切羽の情報を施工が進むに従ってAIで管理し,オフィスに居ながら国内だけでなく世界各地の情報を一元管理するためのシステムの構築過程について説明をしていただきました.特殊なカメラで撮影したトンネル切羽の情報をAIで判断させ,岩級判定につなげることなど,地質的な判断を土木技術者が行う作業をサポートするシステムは興味深いものでした.
3.おわりに
地盤工学会関東支部評議員・栃木県グループ幹事 ((一社)栃木県建築士会) 永野 通夫様に閉会の挨拶を頂いた後,会場を移して講師の先生を囲み意見交換会を開催しました.話題提供の際とは別に,AIの哲学など深い話をすることができました. |