地盤情報を活用した首都直下型地震への対策検討委員会成果報告会および講習会開催報告

地盤情報を活用した首都直下型地震への対策検討委員会

 1.はじめに
 地盤工学会関東支部「地盤情報を活用した首都直下型地震への対策検討委員会」は,2015年から2017年の3年間の活動の成果を報告するとともに,この活動に関連した全国電子地盤図を用いました地震応答解析や液状化判定についての講習を平成30年6月8日(金)10:00~17:00に地盤工学会の地下会議室で行いました。この成果報告会への参加者数は56名でした.
 2.成果報告会の実施について
 午前の部として、地盤情報を活用した首都直下型地震への対策検討委員会成果報告会を開催しました。はじめに,安田委員長から、「はじめに ~活動主旨と活動概要の説明~」と題して,今回多くの方が御集り頂いた御礼と、委員会の3年間の活動を総括した報告が行われました(写真-1)。そのあと、本委員会の活動を構成する3つのWGから個々のWGの活動成果について説明が行われました。
 WG1は、「地盤情報DBの現状と課題」と題して,副主査の丸山 昌則委員(基礎地盤コンサルタンツ)から、東京都内におけるボーリング情報の取得可能性、特に建築申請分の公開可能性として、各区の対応状況について説明が行われました。WG2は、「首都圏の地震における地盤工学上の問題点」と題してWG主査の和田 里絵委員(応用地質)からWG内で実施された研究テーマの概要を紹介して頂いた後、特に検討が進んでいる研究内容の紹介として、「研究紹介1:液状化対策を目的とした下水道管路埋戻材の粒度特性に関する検討」細川 聡美委員(シーエスエンジニアズ),研究紹介2「地盤・地震動の違いによる杭基礎被害の簡易検討」落合 努委員(構造計画研究所)の説明が行われました。WG3は,「地盤モデルの利活用,社会への発信方法の検討~3次元グリッドモデルの応用~」と題して,関口 徹委員(千葉大学)から,地盤モデルによる大宮台地周辺の3次元グリッドモデルをもとに、地震のデータによる地震応答の特性評価について話題提供をして頂きました。これまでに作成された地盤モデルとは別に微地形の扱いに工夫が必要であることが説明されました。その後、2つの話題提供「メッシュサイズの違いが地盤のモデル化に与える影響」を安田 進委員長(東京電機大学,関東支部支部長),「電子地盤図高度化の試み:三次元グリッドモデルの方法と適用例」木村 克己委員(防災科学技術研究所)に行って頂き,液状化判定のためには,微地形の範囲を少しでも反映できる50mメッシュが250mメッシュに比べて有効であること、電子地盤図を高度化するために3次元グリッドモデルが有効であることを示して頂きました。全体の質疑では、地盤モデルの構築方法などについて地形との関連を反映させる大切さについて意見を頂きました(写真-2)。
 3.講習会の実施について
 午後の部として.全国電子地盤図を用いた地震応答解析および液状化判定に関する講習会を開催しまた。まず,「液状化現象の解説およびSHAKEに関するモデル化」と題して安田 進委員長から地盤の動的解析の各種扱いと入出力データの取り扱いで気をつける点について説明して頂きました。その後、「電子地盤図を用いた地震応答解析に関する講習会」と題して、SHAKEの汎用版ソフト成層地盤地震応答解析プログラムk-SHAKE(構造計画研究所)への特別ライセンス版をお借りして、地震応答解析とその対応方法について、落合 努委員と構造計画研究所の社員の方々のサポートを頂きながら講習会を行いました。
 また、休憩を挟んで,中央開発から無料でWeb公開されている液状化簡易判定ソフトCKC-Liqを用いて,「電子地盤図を用いた液状化判定に関する講習会」を開催し,王寺 秀介委員(中央開発)によって、概要の説明と演習を行って頂きました。
 4.おわりに
 地盤工学会関東支部「地盤情報を活用した首都直下型地震への対策検討委員会」は、安田委員長のご指導のもとに,首都直下型地震への備えとして、東北地方太平洋沖地震の被害を整理して、地盤モデルの更新するための地盤情報データの追加収集、地盤モデルの高度化の試み、地盤モデルの地震応答解析、液状化判定の活用などを進めて来ました。これらの知見を書籍「新・関東の地盤」の続編として盛り込むための準備を今後行う予定です。
講習会参加者からのアンケートを行った結果、概ね良好な感想をいただきました。一方で,内容が盛り沢山でもっと時間かけて欲しいなどの意見を頂きました。
 本委員会は,この報告会をもちまして活動を終えますが、この委員会の主要な活動路線を引継ぎ,新たに、地盤情報や地盤モデルを宅地防災に役立てる事を目的とした「地盤情報を活用した首都直下型地震に対する宅地防災検討委員会」として新たに活動を始めます。引き続き皆様のお力添えをお願いいたします。 文責:清木隆文(委員会幹事:宇都宮大学)

写真-1 安田委員長の講演の様子

写真-2 聴講者及び質疑応答風景