地地盤工学会関東支部栃木県グループ勉強会
~地盤にひそむリスクを学ぶ~ 開催報告

関東支部 栃木県グループ
幹事 清木 隆文(宇都宮大学)

 1.はじめに
 平成29年度の地盤工学会関東支部栃木県グループ主催の勉強会は,パルティ(とちぎ男女共同参画センター)研修室302で6月22日(木)の午後に開催しました.関東圏以外からの参加者も含め,29名の方にご参加頂きました.今回の勉強会は, 関東支部の地盤リスクと法・訴訟等の社会システムに関する事例研究委員会で編集されました「法律家・消費者のための住宅地盤Q&A-安全・安心な宅地のチェックポイント-;地盤工学会関東支部 地盤リスクと法・訴訟等の社会システムに関する事例研究委員会編」の発刊を記念しての勉強会でした.
 2.勉強会の概要
話題提供1:「熊本地震の地盤災害報告と住宅地盤Q&A」 稲垣 秀輝氏 (株式会社環境地質 代表取締役,地盤リスクと法・訴訟等の社会システムに関する事例研究委員会委員長)に,2016年4月熊本地震を調査された様子を地盤との関わりについて解説を加えながら,説明をしていただきました.益城町でのUAVの撮影映像を活用した地質の確認の動画は大変迫力があり,稲垣先生がこれからの地盤調査に大きな変革をもたらすことを強調されている理由が良くわかりました (写真-1).また,宅地の震災被害と地盤の関係について,これまでの経験をもとにした丁寧な解説が印象的でした.稲垣先生から現場所見に対する問題が参加者に出され,アクティブ・ラーニングのようでした.
話題提供2:「地盤に関する法律問題~裁判実例を踏まえて~」 吉岡 和弘氏 (吉岡法律事務所,地盤リスクと法・訴訟等の社会システムに関する事例研究委員会委員)に宅地に関係する災害と法令に基づいた,判断について結審した判例,和解した判例,これから問題となると想定される案件について,例を示しながら解説していただきました(写真-2).宅地被害は,その原因を明らかにすることで,場合によっては保障の助けとなりますが,その現象を解釈する数式の使い方と法令の解釈によっては必ずしも保障に結びつかないことがあるという点,興味深いものでした.フロアからも事例と判例の解釈について様々な意見が出てきました.地盤工学の現象が力学的な数式から定量的に判断を行うことに対して,これを法令に照らし合わせて判断する場合,表面的な言葉の解釈に留まらず,判断する方々の地盤工学への理解が深められることが正しい解釈につながることが感じられました.
 3.おわりに
 この度の勉強会は,宅地や地盤の被害を工学的な視点だけでなく,法的な解釈を行う視点から勉強する良い機会となりました.

        

写真-1 稲垣先生のご講演風景

写真-2 吉岡先生のご講演風景

 アンケート回答 [回答者数6名]
Q1.本日の講演会について、ご感想をお聞かせください。

回答数
割合
(1)たいへん良かった
6
 100%
(2)まずまずだった
0

 0%

(3)期待ほどではなかった
0
 0%
(4)期待はずれであった
0
 0%
(5)その他
0
 0%
   無回答
0
 0%

もう少し時間があると講師の先生からより詳しい話が頂けたのではないかと思いました。

Q2.本日の講演会のなかで、特に参考になったものをお聞かせください。
(1)「熊本地震熊本地震の地盤災害報告と住宅地盤Q&A」
講師:(株)環境地質代表取締役,地盤リスクと法・訴訟等の社会システムに関する事例研究委員会委員長 稲垣秀輝氏  
・活断層との距離と斜面崩壊規模のグラフでは主に南東側に多く確認されているとの報告は関心深い所であった。
・地すべり調査でUAV空撮が有効だった事(樹木がない特殊な現状が反映)
・地質と災害発生の相関性
・訴訟事例の解説
・地震も怖いが、地下水位が高いと軟弱になっているというのは、良く理解出来た。
・軟弱地盤の地盤事故や道路斜面崩壊での訴訟等における鑑定意見は大変参考になりました。もっと詳しくお話をお聞きしたいと思いましたが、時間がなかったのが残念です。
・特に,3.地盤の相談・訴訟Q&Aが面白く,勉強になりました.
(2)「地盤に関する法律問題~裁判実例を踏まえて~」
講師:吉岡法律事務所,地盤リスクと法・訴訟等の社会システムに関する事例研究委員会委員 吉岡 和弘 氏
・建設・建築に携わる人々は訴訟直結すると言う認識を常に持ち、今後の仕事の戒めになった。実例の全てが印象深い。
・日頃相対することのない弁護士の先生の貴重な意見がきけて、有意義だった。
自分の知識が少ないことを思い知らされた。
建築業務では怖いことが沢山あると感じた。
・訴訟事例の解説
・証拠としての地盤工学の有効性
・建築技術においては地盤工学の勉強が不可欠である。(建築学における地盤工学の必要性)
・いろいろなケースで、誰に(どこの機関が)責任があるのかは、難しいということが解った。
・基礎的な法的構成を懇切丁寧に説明して戴き、また地盤に関する多数の判例を紹介して戴き大変参考になりました。
・具体的な事例紹介が勉強になりました.


Q3.今後どのような行事を希望されますか?(複数回答あり)

回答数
割合
(1)講演会
3
 50.0%
(2)勉強会
2
 33.3%
(3)先進事例の発表・展示
2
 33.3%
(4)基礎的な勉強会等
0
 0%
(5)その他
0
 0%
   無回答
1
 16.7%

(1)・他分野の講師をお招きいただければと思います。ロボット工学の先生等。
(2)・地盤事故等の原因に関する鑑定書
   ・現場見学会,現地討論会など
(3)・土検棒などの実地研修

Q4.(公社)地盤工学会会員になることを検討されますか?

回答数
割合
(1)会員です
2
 33.3%
(2)正会員(個人)になることを検討します
2
 33.3%
(3)法人会員になることを検討します
0
 0%
(5)その他
0
 0%
   無回答
2
 33.3%

Q5.地盤工学会関東支部栃木県グループに対するご意見又、今回の講習会でお気づきの点がありましたらお聞かせください。
・現地見学会などにおいて砂防事業の現場を選定・視察いただきたい。
(昨年も上塩原の現地を視察いただきました。)
・今回の会場が宇都宮駅から遠いことが,すこし不安でした