第11回 地盤工学会関東支部栃木県グループ講演会
-栃木の地質と地震災害 震災を防ぐ取り組み-開催報告

関東支部 栃木県グループ
幹事・清木 隆文

 1.はじめに
 平成28年度の地盤工学会関東支部栃木県グループ主催の講演会「地盤を学ぶ」は,栃木県南西部の足利市民プラザで11月24日の午後から開催しました.午前中の降雪で,参加者の足元は心配されましたが,82名の方にご参加頂きました.この度の講演会は,足利市役所建設技術協会,土木学会関東支部栃木会,(一社)栃木県地質調査業協会に共催して頂き,また,(公財)とちぎ建設技術センター,(一社)栃木県建設業協会,栃木県土木施工管理技士会,(一社)栃木県建築士会,NPO法人栃木県防災士会,下野新聞にご後援を頂きました.今年度の講演会は,足利市に会場費など,多大なご援助を頂き開催しました.
 栃木県グループリーダー幹事の西村 友良先生(足利工業大学創生工学科建築・社会基盤学系 教授)から開会挨拶を頂き,講演会の2日前に発生した2011年東北地方太平洋沖地震の余震や,熊本地震などを例に挙げ災害に備える必要性が言及されました.また,講演会開催の歓迎のご挨拶を足利市役所建設技術協会・会長で足利市役所都市建設部部長の金子裕之様から頂きました.
 2.講演概要
 講演1「栃木県の地質と災害」:吉川 敏行様(産業技術総合研究所地質調査総合センター室長)から,栃木県の地質図作成に携われるとともに,地質学の専門家として宇都宮大学などで非常勤講師を務めて居られる立場から,栃木県の地形,地質の特徴と地形の成り立ちについて解説をして頂きました.ご講演に対してフロアから,断層,活断層の情報と地震災害との関連について質問が出ました.これに対して見えない断層が問題で,重力探査などの情報から,地下深部に隠れている活断層を新たに見つかる可能性ついて説明されました.
 講演2「地震の国内外の事例と地震動の予測」:池田 隆明先生(長岡技術科学大学 環境社会基盤工学専攻 教授)は国内外の震災調査を行われ,震災と地震動などとの関連を研究して居られます.2016年熊本地震と1995年の兵庫県南部地震の地震動の違いと被害発生状況の違いを解説して頂きました.地域係数と被害の関係など土木構造物もともとの構造と今回の被害の関係など,解説して頂きました.また,パキスタン,ネパールなどの震災調査と継続調査に伴う地盤災害のモニタリングの事例.地震外力が耐震性能を上廻らないように地震の波を推定する事例として,経験的グリーン関数法による地震動の推定手順を説明して頂きました.
 3.おわりに
 講演会は,地盤工学会関東支部評議員・栃木県グループ幹事 永野 通夫様((一社)栃木県建築士会)の閉会挨拶を頂き盛会のもとで終了しました.その後足利市内で会場を移し,講師の先生を囲んでの意見交換会を開催しました.この度の講演を通して,栃木県の地形・地質学的な特徴や地震災害の特徴など,理解を深めることができました.参加者からのアンケートを確認した結果,講演内容に対する評価は良好でした.講演内容が幅広かったこともあり,講演時間をもう少し長くすることを期待するご意見も頂きました.これらの意見を次回講演会に活かしたいと思います.

        

写真-1 講演会参加者の聴講風景

写真-2 講師による講演の様子

 アンケート回答 [回答者数62名]
Q1.本日の講演会について、ご感想をお聞かせください。

回答数
割合
(1)たいへん良かった
35
 56.5%
(2)まずまずだった
26
 41.9%
(3)期待ほどではなかった
1
 1.6%
(4)期待はずれであった
0
 0%
(5)その他
0
 0%
   無回答
0
 0%


Q2.本日の講演会のなかで、特に参考になったものをお聞かせください。
(1)『栃木県の地質と災害』講師:産業技術総合研究所地質調査総合センター 吉川 敏之氏
  ・オープンデータベースの活用が進んでいることの紹介
  ・堆積したローム下の地形等、谷間がある事実等
  ・地元の地質を学ぶことができ、今後役立つものが多いと思った
  ・太田断層が存在した場合、栃木県南部は安全ではないということ
  ・各種公開情報がある
  ・栃木県の地質に限定した講演を開きたかったので、とても勉強になった
  ・「自分の地図を作ってみませんか」というものに大変興味を持った
  ・業務の中でも活かせそう、作ってみたいと思った
  ・GISを利用したオープンデータの活用法が目新しかった
  ・ウェブサイトの活用例は参考になった
  ・地盤の違いと地震動
  ・栃木県の地質と地盤の特徴が理解できた
  ・栃木県の地質と詳細な説明
  ・オープンデータを今後利用していきたい
  ・解りやすい内容であった
  ・重力波と断層について興味があった
  ・フリーなデータの話や栃木県の地盤の成り立ちがわかった
  ・地域特性がよくわかった
  ・栃木県の地質や特長において再認識できた
  ・情報がウェブにあることがわかり、今後利用していきたい
  ・栃木県の地質構造がよくわかった
  ・栃木県の地形と地質
  ・県内の活断層は一つあること
  ・地盤の強度について
  ・大変参考になったが、栃木県の特色と位置付けが明確だともっと良いと思った
  ・ウェブ上に解析に使用できるオープンデータがたくさんあること
  ・県内に断層があることを知った
  ・栃木県の地質や断層の状況
  ・足利に断層があるかもしれないと知れたこと
  ・活断層について、栃木県には1つあること
  ・斜面災害の講演に時間を使えればと思う
  ・GISについて
  ・もっと身近にGISが利用できれば良いと思う
  ・活断層が栃木県内には1箇所であるが、見つかっていない断層は考えられる
  ・重力探査が面白そう、地震の時は火山も危ないこと
  ・役立つ研修になった
  ・住んでいる地域の基本的な情報を得られたので参考になった
  ・たいへん解り易く素晴らしい講演だったが、pptの接解不良はもったいないと思う
(2)『自身の国内外の事例と地震動の予測』講師:長岡技術科学大学環境社会基盤工学専攻教授 池田隆明氏
  ・地震事例も良かったが、解析「地震動」についてもう少し聞きたい気がした
  ・地震耐震に対する適正な基準を考えることが有効であることが理解できた
  ・非常に勉強になった
  ・活断層から被害予測できること
  ・熊本地震の被害事例について「橋梁の位置と断層)
  ・事例は大変参考になったがもっとまとめ的な話があると良かった
  ・海外の地震について深く知ることができて参考になった
  ・熊本地震の橋梁やトンネルの被害
  ・ネパールやパキスタンの地震被害の状況と建物の構造
  ・過去の地震の検証
  ・被害原因などまとめに時間が欲しかった
  ・地震被害と原因の説明
  ・揺れに対する対策は考えられると思うが、地表のズレまでを考慮する考えはなかなか難しいと感じた
  ・津波予報の出し方
  ・地震のメカニズムや被害の形態など
  ・災害事例の写真
  ・写真を用いて破壊原因の説明があり理解しやすかった。地質や断層を考えることの大切さを改めて感じた
  ・地震の揺れ以外がもたらす構造物への影響がいかに被害をあたえるのか理解できた
  ・新しい地震被害(橋梁柳の床掘、緩斜面10度崩壊、地盤陥没)とその要因の紹介
  ・地震による構造物への影響、そのメカニズムと今後の対応
  ・現地を見た地震に対する講演がたいへん良かった
  ・タイムリーな話題で良かった
  ・事例は大変おもしろかった
  ・構造物の被害、原因、予測等の解説が的確でわかりやすかった.報道されていない被害も確認ができた
  ・熊本地震の地盤と建物被害
  ・国内外の地震の原因を写真を見ながら説明していただけて貴重な機会だった
  ・県道など橋梁の被害を知ることができ、耐震設計の研究がどんどん変わっていくのではと思った
  ・熊本地震には土木構造物被害の実態をみて、設計時の条件以上の荷重の作用、当時の耐震性能の低さが伺えた
  ・地震災害の事例はとても良かった
  ・原因不明の地盤沈下
  ・報道では出てこない構造物の被害とその原因について写真等をまじえてわかりやすく理解が深められた
  ・各地の地震被害とそのメカニズムのわかりやすい説明
  ・先日の福島県沖を例にだしていただいたので理解しやすかった
  ・熊本地震の被害状況と地盤の関連性
  ・事例をもとに説明されていて非常にわかりやすかった
  ・合成開口レーダー解析による地殻変動について
  ・いろいろな日本や世界の被害を知ることができた
  ・様々な震害が見れて良かった
  ・加速度応答スペクトルの比較において過去の地震とあわせて今後の対応につながる説明が納得のいくものであった
  ・橋の被害状況を写真を見ながら説明されていて勉強になった
  ・熊本地震の土木構造物の被害状況が興味深かった
  ・具体例の紹介が役にたった


Q3.今後どのような行事を希望されますか?(複数回答あり)

回答数
割合
(1)講演会
16
 25.8%
(2)勉強会
10
 16.1%
(3)先進事例の発表・展示
15
 24.2%
(4)基礎的な勉強会等
7
 11.3%
(5)その他
0
 0%
   無回答
20
 32.3%

(1)・地域性に重みをおいた内容のもの
  ・今日のような講演会の実施
   ・地盤の空洞化
   ・地震
   ・栃木県のこと
   ・地盤改良に関するもの
   ・栃木県の地質を詳細に
(2)・栃木県の地質を知った上での土木構造物への施工
   ・最終処分場
   ・実物研修
   ・防災関係
   ・斜面災害、インフラの長寿命化
(3)・展示会のようなもの
   ・地盤災害の復旧、復興技術など
   ・近年の地震解析
(4)・様々なデータ解析実習
   ・実際の調査方法など

Q4.(公社)地盤工学会会員になることを検討されますか?

回答数
割合
(1)会員です
19
 30.6%
(2)正会員(個人)になることを検討します
0
 0%
(3)法人会員になることを検討します
2
 3.2%
(5)その他
27
 43.5%
   無回答
14
 22.6%

Q5.地盤工学会関東支部栃木県グループに対するご意見又、今回の講習会でお気づきの点がありましたらお聞かせください。
  ・地盤の研究から、安全安心な対策が講じられることを望む
  ・今後も定期的な講演会を期待する
  ・今後もこのような機会を持続していただきたい
  ・若手技術者が多数参加されており、今後も継続してほしい
  ・定期的な講演会、現場見学会等を計画していただきありがたく思うこれからも続けてほしい
  ・地域における設計や施工の事例を紹介してほしい
  ・両講師の講義をもっと詳しく聞きたい、時間が足りないと感じた
  ・地盤調査の勉強会の開催
  ・今後も研修、講演会の開催を期待する
  ・今後もこの様な講習があれば是非参加したい
  ・このままでよい
  ・学生の研究にもこの会を活かしてほしい、有意義な時間だった