栃木県の地盤から見た地盤リスクに関する勉強会
~あなたの土地の見方は大丈夫?~ 開催報告

関東支部 栃木県グループ
幹事・清木 隆文(宇都宮大学)

 1.はじめに
 東日本大震災において関東地域では宅地地盤被害が多く発生しその品質保証の重要性が注目され,昨年の広島土砂災害や今年の関東・東北地方豪雨災害など気象変動に伴う地盤災害の発生,横浜の支持杭問題等から,身近な地盤の様々なリスクにも注目が集まっています。このような背景のもと,宅地造成業者・不動産業者・住宅メーカー等と住宅及び宅地取得者の間に立ち,宅地地盤の品質の確認と説明を行う地盤品質判定士の活躍が期待されています。そこで平成27年度の栃木県グループの勉強会は,平成27年12月11日に,宇都宮東地区センターで開催しました。勉強会の内容は,地盤リスクの考え方,液状化などの具体的な被害に関連した宅地地盤リスクを学ぶとともに,地盤品質判定士の受験対策からその資格の活用までを対象としました。これらの内容を稲垣 秀輝様(地盤リスクと法・訴訟等の社会システムに関する事例研究委員会委員長,株式会社環境地質代表取締役),海野 寿康先生(栃木県グループオブザーバー,宇都宮大学大学院工学研究科准教授),林 健太郎様(関東支部評議員,栃木県グループ幹事,五洋建設株式会社 技術研究所副所長)の3名の講師を招き,解説して頂きました。今回の勉強会への参加者は48名(写真-1)で,宅建関係や不動産関係者の参加者が多く,通常と異なる雰囲気の中での開催となりました。
 2.勉強会における話題提供
 喜内幹事((株)芙蓉地質)からのご挨拶のあと,3名の話題提供が行われました。
話題提供(1) 地盤リスクと宅地の安全 稲垣 秀輝様: 稲垣様は地質コンサルタントの技術者,企業経営者の立場から,地質露頭や構造物と地盤との関連を見て,次に何が起こるのかいつも考えるように促されました(写真-2)。具体的には,写真や図で地質露頭や検討事例を示し,どこにリスクがあるか,初級編から地盤技術者に即した応用編まで,質疑応答と解説が行われました。それぞれの立場で,地盤リスクをいつも考える大切さを学ぶことができました。
話題提供(2) 栃木県内の宅地造成・液状化・斜面災害等の地盤リスク 海野 寿康先生:海野先生は,土質力学の観点から,液状化の起こる仕組みをその用語の定義とともに基礎的なところから応用的なところまで丁寧に説明して頂きました。また,東日本大震災を例にとり,栃木県内の被災状況,東北地方における宅地の被災状況,火山灰質土の震災被害の傾向とその対策工などについてご講演いただきました。宅建関係や不動産関係者に,地盤分野の詳細を知って頂く良い機会となりました。
話題提供(3) 地盤品質判定士と資格合格のコツ 林 健太郎様: 最近の宅地建設に関連した問題について説明して頂き,これを解決するために,地盤品質判定士の資格を取得することの大切さについて,話題提供をして頂きました。また,これまでの過去問に対しての考え方,記述式の構成対策など,解答を構築するための基本的な考え方を説明して頂きました。これを機会に地盤品質判定士の受験者が増えることと,益々の資格取得者の活躍が期待されます。
 4.おわりに
 2015年9月に発生した東北地方および関東地方で発生した豪雨災害を経て,改めて地盤災害に備えることが重要視されました。この度の勉強会は,今後の備えとなる勉強内容で,非常に参考になりました。
ご多忙の中,貴重な話題を提供して頂きました稲垣様,海野先生,林様に感謝致します。

写真-1 勉強会の様子 写真-2 稲垣 秀輝様のご講演風景