平成27年12月10日に相模原商工会議所において表記の題で講演をさせていただいた。相模原市は筆者の自宅の最寄りの駅から小田急線でわずか30分。しょっちゅう通過しているのであるが、降り立ったのは今回初めてである。特に災害で問題になる地域ではなく、訪れる機会はなかった。
相模原商工会議所から、地盤工学会関東支部に災害に関する出前講座の問合せがあったのは、10月初めである。筆者は9月に発生した鬼怒川堤防決壊の調査委員会に関係させてもらっていたので話が回ってきて、引き受けさせていただくことにした。ただし、相模原市の中心部は広い相模原台地にあり、どうみても軟弱地盤などなく、どんな地盤災害が問題なのであろうか? と疑問に思った。そこで関東支部の事務局を通して打合せをしていただいた。その結果、①災害の種類、②相模原市の地盤の特徴、③相模原市に関係ありそうな被害、④他都市での過去の災害事例に関して2時間ほど話すことになった。
ただし、「i) 相模原市の“ウリ”である「地盤が強い」とはどういうことか?、ii)「地盤が強い」ことでのメリット(建設コスト削減による経済効果など)、iii)メリットを生かした活用方法(精密工場向けなど)、iv)一方、弱点・欠点に関しても触れてもらいたい」と注文され、なるほど!と感心した。筆者が話す場合には、どうしても悪い地盤での災害発生の危険性ばかり強調してしまうが、『良い地盤だと災害は受けない』ことをちゃんと話すことも大切だ、と目覚めさせられた。
さて、初めて足を入れる土地で頼りになったのは、4年前に皆さんに執筆していただいた「全国77都市の地盤と災害ハンドブック」である。相模原市の地盤、災害履歴などが網羅されており、これをもとに相模原市の地盤の特徴の資料を作成した。他都市での過去の災害事例に関しては、“鬼怒川堤防の決壊”、“東日本大震災で液状化により被災した都市の復興”、“液状化により甚大な被害を受けたクライストチャーチにおける対応”、“東日本大震災で被災した丘陵地の造成宅地における復興”、“東日本大震災の津波により被災した三陸海岸の復興”をとり上げた。
講演会場は相模原市立産業会館内の国際商談室なる立派な部屋で、40名の募集定員にすぐ達したとかで、当日は結局39名出席された。皆さん熱心に聞いていただき、後の質問もいくつか出て、話し甲斐がある講演会であった。また、この講演の案内を見られた相模原市在住のO氏から、講演の後でイッパイどうかと誘われ、相模原の美味しい酒を酌み交わすことが出来た。関係各位に感謝する次第である。
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