「日光稲荷川砂防堰堤群見学会」開催報告

関東支部 栃木県グループ
(株)芙蓉地質 宮崎 基浩

 栃木県グループでは,国土交通省関東地方整備局日光砂防事務所のご協力のもと,平成27年7月23日(木)に26名の参加をいただき日光稲荷川砂防堰堤群の見学会を開催しました。
 稲荷川は日光市内を流れる大谷川の支流で,暴れ川として知られておりたびたび土砂災害が発生していたため,大正7年より内務省(現・国土交通省)がいくつもの砂防堰堤を築造しました。平成14年および平成15年には8基の砂防堰堤が国の登録有形文化財として登録されています。
 当日は日光砂防事務所に集合し,2F会議室にて三輪所長様より,日光砂防事務所の事業および稲荷川砂防堰堤群の沿革などを説明いただいた後,マイクロバス2台に分乗し見学に向かいました。最初に日向砂防堰堤および対岸の山腹工現場を見学しました(写真2)。
 続いて稲荷川砂防堰堤群(第6堰堤周辺) 見学しました。堰堤は現地の石を使用した間知石で積まれ,特に通水部は「黒烏」と呼ばれる石が用いており石色の違いが鮮やかでした。台風や集中豪雨などを契機にはがれた間知石は,現在でも現地の石を職人さんに加工して頂き補修を重ねているそうです (写真3)。
 最後に世界遺産東照宮付近を流れる天狗沢の景観に配慮した低水位護岸を見学しました。この護岸は,確かにあらためて説明をうけなければ気が付かないくらい周囲の景観に溶け込んでいるように感じました。
 見学後,事務所会議室に戻り行った質疑応答は,参加した学生から積極的な質問がなされ,日光砂防事務所佐藤様ほかから丁寧かつ詳細な回答を頂き有意義な時間となりました(写真4)。
 最後になりましたが,今回の見学会の開催にご協力いただいた日光砂防事務所をはじめ関係者の方々には,深く御礼申し上げます。

写真1:参加者の集合写真 写真2:稲荷川上流の山腹工現場
写真3:稲荷川砂防堤群 写真4:見学後の質疑応答

 日光稲荷川砂防堰堤群の見学会勉強会(H27.07.23)アンケート集計

 Q1. 本日の現場見学会についてご感想をお聞かせください。
全体
件数
割合
 1 たいへん良かった
9
8
88.9%
 2 まずまずだった
9
1
11.1%
 3 期待ほどではなかった
9
0
0.0%
 4 期待はずれだった
9
0
0.0%
 5 その他
9
0
0.0%
 無回答
9
0
0.0%

Q2. 本日の現場見学会の中で、特に参考になったことをお聞かせ下さい。
・稲荷川砂防堰堤群の存在は知っていましたが、規模等については全く知らなかったので見学することが出来ただけでも大変良かったです。
・日光砂防の歴史
・通常見学できない場所にて、現場を見ながら防災の意識(必要性)を技術面からも説明していただけたことが大変有意義に感じました。
・その地域での災害の歴史を聞いてから現場を見に行ったこと。
・一般人立入禁止の山腹にて、山腹工や堰堤を目視で確認できたことは、普段都市部で業務を行っている身としては、すべてが新鮮且つ刺激的な経験であった。堰堤群は特別な機会が無ければ見ることが出来なかったため印象に強く残っている。
・稲荷川上流山腹工において、斜面勾配に応じて様々な工法を使い分けていたこと。
・山体の崩壊履歴が参考になった。
・古い石積みの堰堤が現在でも機能していることを確認出来たこと。多種多様な堰堤が複合的に機能を発揮し、土石流の発生に備えていることが確認出来たこと。

 Q3. 今後どのような行事を希望されますか?
全体
件数
割合
 1 講演会 ※1
10
1
10.0%
 2 勉強会
10
1
10.0%
 3 先進事例の発表・展示 ※2
10
5
50.0%
 4 基礎的な勉強会等
10
1
10.0%
 5 その他 ※3
10
2
20.0%
 無回答
10
0
0.0%

※1栃木県の代表的な土構造物の紹介。※2今回同様、現場を見ながらの行事。落石・地すべり対策など。※3あれこれ、いろいろあるのがいいのではないかと思います。今回のような現場見学会。

 Q4. (公社)地盤工学会会員になることを検討されますか?
全体
件数
割合
 1 会員です
9
3
33.3%
 2 正会員(個人)になることを検討します
9
0
0.0%
 3 法人会員になることを検討します
9
0
0.0%
 4 その他
9
5
56.6%
 無回答
9
1
11.1%

Q5.地盤工学会関東支部栃木県グループに対するご意見又、今回の現場見学会でお気づきの点がありましたら是非ともお聞かせください。
・お忙しい中、企画から実施までお疲れ様です。見学会について強いて気づいた点を挙げるなら、構造形式の異なる堰堤を見学できたらもっと良かったと思います。
・関東圏グループの中でいつも活発な活動に感心しています。今後ともよろしくお願いします。
・日光砂防の現場を見るのであれば、次のレベルとして、大薙山腹工を推奨します。明智平から傍観し、次に直接現場に入って工事を見ると砂防事業の意義を実感します。
・初学者向けに砂防の入門講義・課外講義等が充実され、普段学ぶことができないことを身につけられる内容が増えることを希望します。
・県の事業ではなかなか経験できない大規模な砂防の現場を見ることができ、貴重な経験となりました。稲荷川のハイキングコースは、後日全線を踏破したいと思っています。
・活発なグループで、いつも賑やかでいいなと思っています。
・今回のように文化遺産に指定されている施設を見学する際は、土木工学的な観点だけではなく、文化的な観点からの説明があると尚良かったと思います。