この度、群馬県グループが土木学会関東支部群馬会と共催にて、「土砂災害に関する講習会」を実施しましたので、下記ご報告させていただきます。
本講習会は、平成27年1月23日(金)の13:00~17:00に、群馬建設会館Aホールにて開催され、近年話題となっている土砂災害がテーマであるため、県内・外から123名もの参加者がありました。
最初の講演は、地盤工学会関東支部群馬県グループのリーダー幹事を務めております、群馬大学大学院の若井明彦教授より「最近国内で発生したいくつかの土砂災害事例」と題しまして、東京都伊豆大島・長野県南木曽町・広島県広島市北部が紹介されました。
各々の土砂災害は、地形的・水文的・地質的などの条件が組み合わさって発生し、甚大な被害を引き起こしたことが説明されました。特にこのご講演では、砂防堰堤工事を経験した私にとって、南木曽町での砂防堰堤の破壊映像が衝撃的であり、土石流の破壊力と土砂災害の恐ろしさを再認識しました。そして、ご講演の最後には、若井教授は以下の3点を強調されました。
(1)活動中あるいは最近まで活動していた第四紀火山の縁辺に、伊豆大島と同様の地形・地質的条件を有する斜面地域がある場合、注視したほうがよい。
(2)風化花崗岩地帯等での土砂災害には引き続き警戒が必要。土砂災害防止法の精神を尊重し、危険度の高い地形条件等についての防災意識が肝要。
(3)もし、極端気象の頻度が近年増加しているのだとすれば、土砂災害も頻発化、大規模化する可能性があるので、施設点検等を含めた対応が望まれる。
続いての講演は、前橋気象台の齊藤清台長より「気象庁の発表する各種情報について」と題しまして、気象情報全般から土砂災害警戒情報や地球温暖化による雨の降り方の変化までお話しを聞かせていただきました。
普段聞いている注意報・警報・特別警報の画像等による詳細な説明は、的確でわかりやすい説明でした。土砂災害警戒情報の説明では、降雨と指数と防災情報のつながりを教えていただき、防災情報である土砂災害警戒判定メッシュ情報について理解ができました。
地球温暖化の説明では、将来は前橋市が九州の宮崎市と同じ年平均気温になり、冬日も約40日減少することなど我々に身近な例でお話しをしていただきました。そして、地球温暖化による雨の降り方では、大雨・短時間強雨の発生頻度の増加と雨の降らない日の増加という、両極端な気象変化が予測されることもお話ししていただきました。このお話しで、雨が降れば土砂・洪水災害、雨が降らなければ渇水という、両面に対する備えが将来必要となることを認識することが出来ました。
最後の講演は、地元群馬県の土砂災害対応について、県土整備部砂防課の坂井努・松本一明さまから「群馬県の土砂災害対策」と「土砂災害対策施設の整備」のお話しを聞かせていただきました。このご講演では、「土砂災害とは何か」・「土砂災害の特徴と課題」・「土砂災害のハード・ソフト対策」・「土砂災害防止法と砂防関係法令」など、土砂災害や砂防のことがわからなかった方でも理解できるように、写真や図表を使用して丁寧に広い範囲まで説明をしていただきました。
ご講演では、土砂災害は全国で毎年約1,000件も発生し、どこで発生するのか正確にわからないので、ハード的な施設整備だけでは対応できないこと、警戒避難態勢の整備や地域防災力向上には何が必要なのかなど、改めて考えさせられるお話しを聞くことができました。
道路や橋梁を直してほしいと言う方はいますが、砂防施設を直してほしいと言う方はあまり聞いたことがありません。しかし、東京都伊豆大島・長野県南木曽町・広島県広島市北部の土砂災害事例を見ると、砂防事業は国民の生命や財産を守る大切な事業であることがわかりました。
今回、この土砂災害に関する講習会を開催し、前橋気象台や県土整備部砂防課のご支援をいただき、大勢の参加者があったことは地盤工学会関東支部群馬県グループ関係者にとって大変うれしいことでした。
土砂災害は自然災害であり、地盤情報は明確に把握することが困難で、災害も突発的に発生するものであり、今後の課題もたくさんあるものと思います。そのためには、災害事例の調査、気象状況変化への備え、対策事業の見直しなど、新たな課題への挑戦が必要となります。今回の講習会が、そのような新たな課題解決に貢献できる有意義なものであったことを願っております。
今後も地盤工学会関東支部群馬県グループでは、新しい地盤問題に注目し、皆様からの要望にお応えできる講習会や現場見学会を開催したいと思いますので、皆様のご協力とご支援をお願いします。
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