平成26年10月10日(金曜日)の午前9時から17時20分まで地盤工学会で「土木史跡の地盤工学的分析・評価に関するシンポジウム」が開催された。ATC19との共催であり関東支部のみならず、全国さらには海外から中国、カサフスタンの参加もあり、参加者は全体で74人であった。発表論文に関しては、一般発表は30編(委員会以外から22編)であった。
第1セッションは委員会報告および共催であるATC19の活動報告がなされた。時間の関係上、委員会報告の時間が若干少ない、という意見もあったが、3年間の活動についてコンパクトにまとめられた報告がなされた。次に第2セッションでは土木史跡一般ということで6編の発表があった。文化財としての土木遺産保存について、海外の遺産の紹介さらに、ATC19から特別講演として愛知大学中部千地方産業研究所の天野様から服部長七による人工石工法についてのご報告がなされた。昼休憩をはさみ、午後は2会場で一般発表がすすめられた。第3,4セッションでは材料の維持管理という枠組みで12編の発表があった。石垣の保存や近代建造物の劣化状況の報告、小原台堡塁の基礎地盤、横須賀製鉄(造船)所石造ドライドック背面の改良土の鉱物組成などそれぞれの構造物の調査や保存に向けての思想などが報告された。第5、6セッションでは設計施工という枠組みで12編の発表があった。東京湾要塞第二海堡における護岸築造技術、大河津分水旧可動堰を支えた木杭の支持力特性、幕末佐賀藩の三重津海軍所ドライドックとその構造についてなど専門的な内容から、第2次世界大戦期の軍事施設遺構の調査と評価、熊野神社古墳復元における地盤工学による考察など多岐多様にわたった。以上一部の紹介ではあるが、他の研究発表も含めて質疑も活発に行われ、発表15分、質疑5分という限られた時間一杯有意義な意見交換がなされた。
発表が終わった後、地下会議室で簡単な懇親会を開催した。地盤工学を専門にする人のみならず、文系、文化財を専門とする方、地質、岩石を専門とする方など様々な分野を横断して意見交換ができ1時間という短い時間ではあったが有意義な懇親会となった。当初、参加人数が少ないことを懸念してはいたが、ふたを開けると地下会議室と3階会議室の2会場でもほぼ満席状態であった。地盤遺跡調査、保存という新たな学会の方向性を垣間見る1日となった。最後に、本委員会にご協力いただいたすべての方に感謝を申し上げて報告とさせていただきます。
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