平成22年4月に,地盤工学会関東支部に設置した「地下水位の回復にともなう広域地盤隆起の問題とその地中施設への影響に関する研究委員会」(委員長 : 小泉淳早稲田大学教授)には,31名の委員と2名のオブサーバーが参加して活動した。
当委員会で取り上げた本研究テーマは,産業発展に伴う大規模な地下水汲み上げの影響による,都市部の沖積軟弱地盤の広域圧密沈下が一旦生じ,その後,社会の環境意識の向上に伴い地下水の揚水規制等の法律が制定され,地下水位が徐々に上昇回復に向かう過程で,今度は,新たに,広域地盤隆起現象が発生することになり,その過程で地中施設にどのような影響を与えるかという,産業と都市社会の発展過程に応じて変動する地下水位と地盤変状,および地中施設への影響という,新しい着眼点の技術的課題である。地下水位回復による地中施設の外力変化としては,第一番目に「浮力」を思い付くが,これは砂質地盤で卓越する現象であり,軟弱粘性土地盤では,粘性土層の吸水膨張過程(圧密圧縮過程とは逆の現象)による地盤の膨張ひずみも地中施設に作用することになり,このひずみによる外力評価と,その地中施設への影響評価方法が,現状では確立されていなかった。
本委員会では,平成22年4月から4年間の活動を経て,報告書を刊行(図-1,頒布価格 \2,000)するとともに,平成26年6月6日に研究成果報告会を地盤工学会大会議室で開催し,正会員42名,学生会員1名,非会員3名,計46名の聴講者が参加した。図-2は報告会のプログラムであり,写真-1と写真-2は報告会の様子である。報告会後に,全体の報告の内容について,質問を記入して頂いた質問シートを回収した結果,聴講者より14質問を頂いた。
|