「アフター5談話会『東京湾海堡建設と和算』」開催報告

                                 地盤工学会関東支部
                                 江戸期以降の土木史跡の地盤工学的
                                 分析・評価に関する研究委員会
                                 会員サービスグループ

 平成26年6月5日(木)17:00-18:00に地盤工学会地下会議室にて、お茶の水女子大学真島秀行 教授による「東京湾海堡建設と和算」の講演会が開催された。この講演会は主催 地盤工学会関東支部会員サービスグループ、共催 関東支部、江戸期以降の土木史跡の地盤工学的分析・評価に関する研究委員会で行われた。当日関東で今年の梅雨入りが発表され小雨が降る中、大学関係、公官庁、ゼネコン、コンサルタント等36名の方にご参加いただいた。
 ご講演は、まず和算の話から始まった。和算とは西洋の数学「洋算」と区別するために作られた言葉で、江戸期に発達した日本独自の数学であるとのこと。塵劫記(実学と数学遊戯)の説明では、面積・体積の求め方、油分け算などの話があり、今もなお「クイズ」として楽しまれているようだ。さらに、関孝和の数々の業績、そして建部賢弘に受け継がれていく数学研究について話が進んだ。円周率をいかに江戸の人たちは正確に求めようと努力していたかについて垣間見ることができた。ここで、NHK歴史秘話ヒストリアで和算が取り上げられた映像の紹介があった。真島先生のインタビューも見ながら、本講演の本題、東京湾海堡建設に大きく携わった西田明則の紹介に移る。番組ではこの難工事である海堡建設に和算が使われ、その建設技術は今日の海洋・港湾建設技術の基礎となり、多大な経験と教訓を与えてくれたと結んでいた。その後、その建設には測量術と称平術(しょうへいじゅつ)が重要であったとの説明があった。称平術とは、物体を吊り下げて所定の二次元なら一直線を、三次元なら一平面を水平にするような方法で、複雑な人工島の想定された形のある面を水平する工事に役立ったと指摘された。ご講演の発表後、多くの方から質問を受けた。江戸時代に円周率はなぜそれほど正確に求めたかったのか、和算の道具「算板」と「算木」の使い方、称平術と海洋建設の関係等々。まだ質問がありそうであったが、時間の関係上締め切らせていただいた。
 今回のアフター5は数学(和算)という分野であったが、今後もこのように地盤工学以外の分野の方によるご講演も企画できるとよいと感じた。

    

                     真島先生ご講演の様子