一般国道400号下塩原第二トンネル建設工事の現場見学会実施報告

地盤工学会関東支部栃木県グループ

1.はじめに
 地盤工学会関東支部栃木県グループでは,年1回の現場見学会を開催しています。本年度は,一般国道400号下塩原第二トンネル(仮称)本体建設工事の現場を平成25年6月11日(火)に見学させて頂きました。この現場見学会は,栃木県大田原土木事務所と,飛島・天野・岩澤特定建設工事共同企業体のご厚意で実現しました。この現場見学会は,当初20名の参加者を予定し,支部の会員向けメーリングリストで案内致しましたが,6月6日の申込み締切を迎える前に定員に達しました。当初,参加者を抽選で人数を絞る予定でしたが,現場のご厚意で39名の応募者全員を受け入れて頂きました。
2. 一般国道400号下塩原バイパスと第二トンネルについて
 一般国道400号は,茨城県水戸市から大田原市,栃木県那須塩原市などを経て,福島県会津地域に至る国道です。この国道は,栃木県にとって,県有数の観光地である塩原温泉郷へのアクセス道路として主要な道路ですが,現状では,土砂くずれや異常降雨時に連続雨量200mm超過で全面通行止めになるなど,住民や観光客の往来に支障を来たすことが問題視されてきました。また,現道が那珂川水系の一級河川である箒川の河岸に沿っているために,急カーブが多く,また狭い道路幅のために,大型車のすれ違いが困難な場所もあります。特に行楽シーズンには,渋滞を助長するなどの問題がありました。この問題を解決するために,栃木県は全体計画長4.6kmの下塩原バイパスの建設事業を進められています。このバイパスは,計画幅員7.5mで,3本のトンネルと2つの橋梁が建設されます。今回見学させて頂いた下塩原第二トンネル(仮称)は,全長1,458mで,第一トンネルに次ぐ長さで,工期は,平成24年6月から平成27年7月の予定です。工法は通常の山岳工法のNATMで,掘削断面は,56m2~75m2です。このトンネルは塩原温泉側から関谷方向に向かって掘削が進められ,見学会当日では347.4mの掘削が進んでいました。構成地山は,福渡層を構成する緑色凝灰岩が主な構成地質で,途中流紋岩の貫入が予想されていましたが,表れているのは地表部だけで,掘削地山にその兆候は見られない様子でした。支保パターンは,坑口付近では,地山が風化している関係で強度が低いためにインバートで閉合するD I-bでしたが,それより先は安定しておりC IからC II-bで支保が行われています(支保パターンの例:図-1,図-2)。

      

写真-1 共同企業体作業所における栃木県大田原土木事務所 浅田課長,簗瀬副主幹のご挨拶

    写真-2 トンネル坑内の様子 ジャンボ付近

        

         図-1 支保パターン CI

    図-2 支保パターン DI-b

3. 現場見学会の実施状況
 当日,参加者は,道の駅,湯の香 しおばらに集合し,10台の車に乗り合わせて,第1トンネル(がま石トンネル)を出たところに位置する飛島・天野・岩澤特定建設工事共同企業体下塩原トンネル作業所に移動しました。作業所の1階会議室で,栃木県大田原土木事務所の整備第2課長の浅田 豊様,同事務所副主幹の簗瀬和裕様にご挨拶をして頂いた(写真-1)あと,現場代理人の藤本克郎様に,工事概要についてパワーポイントを使って説明して頂きました。出席者のほとんどが実務者でしたが,数名の学生も参加していましたので,NATMによるトンネル掘削の手順についてなど工法の基本的なところから現在の切羽状態まで,丁寧に説明して頂きました。その後,作業所から現場まで各自の車で移動しました。現場は,当日掘削などの作業がすべて止められており,絶好の見学の機会となりました。藤本様から,この現場周辺に猛禽類が生息しているため,刺激をしないように付帯の構造物が周辺の自然環境に近い緑色を基調とした色に塗られており,また,現場作業員の作業服も同様に配慮して,深緑色にしてあることが説明されました。また,下がり勾配で掘削している関係から当初の予定から濁水プラント増設し,150t/minの処理能力を有することが説明されました。掘削は終点側坑口から掘り進められており,箒川を跨ぐトラス橋を渡って坑口から入坑しました。施工工事が停止していましたので,構内の空気は澄んでいて,防塵マスクが不要でした。このトンネル工事の特徴として,このトンネル延長では珍しく,ベルトコンベアーが導入されていることです。切羽の発破掘削で発生したずりは,クラッシャーで適当な大きさまで砕かれ,このベルトコンベアーで坑口の外まで運ばれる仕組みになっていました。この施設の導入によって,坑内の騒音低減とCO2排出量削減が図られ,企業体の環境に対する配慮の志の高さが伺われました。坑内は重機などが整然と並んでいるなか,参加者は切羽に向かいながら,支保パターンと地山の関係を藤本様から説明していただきました。トンネル切羽付近にはジャンボが静置され(写真-2),鏡吹付が行われていました。湧水が周辺から多少見られましたが,参加者の方々の感想を伺うと,現場が大変きれいに整備されていること,コンクリートの吹付工の仕上げが非常に丁寧であると感心して居られるご意見を頂きました。この仕上げ作業は,吹付コンクリートの裏の岩盤部の密着度を高め,無駄に隙間をつくることを防ぎ,水みちを作りにくくする配慮がなされていることが推察されました。トンネル切羽(写真-3)を全員で十分見学させて頂いた後,坑口に戻り,参加者で記念撮影(写真-4)を行いました。
 最後に簗瀬副主幹の方から,優れた施工技術を持つ共同企業体によって,きめ細かな環境に配慮した工事が工程どおりに進められていることが補足されました。
4. おわりに
 栃木県グループは,平成25年度の現場見学会として,栃木県大田原土木事務所と飛島・天野・岩澤特定建設工事共同企業体のご厚意で,一般国道400号下塩原第二トンネル(仮称)本体建設工事の現場を見学させて頂きました。参加者は非常に熱心に見学されていました。
 栃木県グループとしても県外から多くの参加者を現場見学会に受け入れることができたことで,会員,非会員を問わず,地盤工学会関東支部や栃木県グループの活動を広く知って頂く良い機会となったことを大変有難く思いました。
栃木県グループでは,今回の見学で得られた知見および経験を地盤技術者にそれぞれの職務に活かして頂くとともに,実際に工事を行って居られる方との意見交換の場を提供するために,活動を継続する予定です。今後も広く県外から興味を持って頂けるように活動を工夫したいと思います。
最後になりましたが,今回の現場見学会実施に際してご尽力を頂きました栃木県大田原土木事務所と,飛島・天野・岩澤特定建設工事共同企業体に,この書面をお借りして御礼申し上げます。
                                                             (文責 清木)

    

      写真-3 トンネル切羽における見学の様子     写真-4 現場見学会参加者の集合写真