横須賀海軍施設内イベント「アースデー環境フェア」への出展報告

江戸期以降の土木史跡の地盤工学的分析
評価に関する研究委員会
藤井幸泰(公益財団法人 深田地質研究所)

1.はじめに
 平成23年度から活動を開始した「江戸期以降の土木史跡の地盤工学的分析・評価に関する研究委員会」は,今年度が最終年となる.この委員会では全体統括,港湾,地下空間,地上構造物の四つのワーキンググループWGで委員会活動を進めている.平成24年9月にはNPO法人アクションおっぱまとの共催で,「明治からの軍事遺構は語る~横須賀市の第三海堡と貝山地下壕」~という講演会を開催し(地盤工学会関東支部ニューズレターNo.29に開催報告あり),主に港湾と地下空間WGの研究成果の一部を,一般市民に広く紹介した.また委員会の活動内容として,主に横須賀地域を対象とした土木史跡の紹介も行っている(地盤工学会誌,Vo.61 No.5).港湾WGで対象としている土木遺跡として,横須賀製鉄所ドライドックがある.横須賀海軍施設内のドライドックは現在も船の修理に利用されており,“遺跡”と呼ぶのは正しくない.しかし江戸後期から明治初期にかけて施工された第一号ドックは日本最古の石造ドックであり,日本の石造ドライドックの源流とも呼べる貴重な構造物である.ドライドックの調査時には,横須賀米軍基地の施設部環境課にいつもお世話になっている.そんなご縁から,去る4月29日(月・祝)に基地内で開催された‘アースデー’環境フェアなるイベントに出展する機会を得た.当研究委員会からは委員長の正垣先生(防衛大学校)と著者の2名が参加し,土木史跡委員会およびドライドックの調査成果,地盤工学会の活動や地盤工学に関するピーアールを行った.
2. アースデーのイベント~環境フェア
 アースデーは6年目を迎える施設部環境課が行うイベントで,今年は環境フェアとして行われた.場所は横須賀基地内のスーパー前のレンガ敷きイベント会場にテントを張り,10~15時まで行われた(写真-1).環境フェアと言うことで,本部は省エネルギーの展示やリサイクルの特別回収などを行っていた.文化財や自然保護部門の参加も求められ,当研究委員会の調査対象になっている第一号ドック(文化財)のピーアールを行った.また外部からの参加は我々だけでなく,NPO法人による三浦半島の生態系に関する展示などもあった.

  

       写真-1 テント内で説明を行う正垣先生

写真-2  1 9 8 6年と2 0 1 2年撮影写真の比較.4分の1世紀でも石材表面に違いがみられる

3. 研究委員会による出展内容
 当委員会から出展した具体的な内容としては,土木史跡委員会の概要と共に,横須賀地域に関わる研究委員会の成果をパネル1枚にまとめた(地盤工学会誌,Vol.61 No.5記事の概要).またドライドック1号を対象に,27年前に東京大学の藤森研究室(建築学科)で撮影された写真と,現在の状態とを比較した試験的調査の一部をパネルとして公開した(写真-2はパネルの一部).横須賀基地内に存在する構造物ということで,訪れる方々からドックの具体的な質問を受けたり,今後の展開に関する議論ができて大変有意義であった.写真-2に例を示した27年前の写真は,白黒といえども当時の記録として大変貴重なものである.実際に石材の上に塗られていたモルタルが現在は剥がれていたり,石材表面が風化で削剥されて凸凹が小さくなっていることが明らかになりつつある.これら過去に撮影された写真は全部で28枚あるが,比較はまだ一部でしかなされていない.調査は今後も継続する予定である.
 ドライドック等の研究委員会成果とは別に,2011年の震災による被災写真も展示した.2011年の震災は,津波から地すべりまで様々な被害を被ったが,液状化とそれによる被害にあわせて,液状化実験装置が子供たちに人気を博した.また震災以外にも,ピサの斜塔の建設経緯・修復工事,斜塔下の地盤調査などの展示も行った.
 さらに資料として,委員会のドライドック調査成果(パネルのコピー,英日併記;作成担当(藤井・菊地委員)),2011年の震災に対する地盤工学会の一次提言(英語版),地盤工学会ホームページの印刷(英語版)を用意し,興味のある方々に配布した.
4. おわりに
 当日は祝日でしたが,アメリカ国内にあわせている米軍基地内では平日と同じ扱いであった.イベントに参加してくれた小学生も,学校の先生が引率した授業の一環であった.横須賀基地内には映画館やスタジアムもあり,レストランもアメリカ形式である.小学校から中学,高校,大学までアメリカのものが存在する.世界中どこであってもアメリカ本土と同じ生活環境を整備する民主主義に感服するが,日本にいながらアメリカの雰囲気を十分に楽しめたのも大変良かった.なお横須賀基地は通常部外者には公開されておりません.
 最後になりましたが,このイベントへの参加機会を与えて下さった,米海軍横須賀基地の施設部環境課にお礼を申し上げます.また後日,この研究委員会宛に,環境フェアのコーディネーターであるChuck Sayon氏より感謝状を頂きました(図-1).こちらもご報告致します.

図-1 環境フェアへの出展に対する感謝状