1.はじめに
栃木県グループでは,毎年,現場見学会を企画し,地域の地盤工学的な経験の共有を図っています。本年度は,第1回目に栃木県グループの学会員,地盤工学技術者,学生を対象に限定的し,さくら市喜連川にあるお丸山公園の災害復旧工事現場を栃木県矢板土木事務所のご厚意で平成24年6月22日に見学させて頂きました。第2回目として,平成24年7月23日に地盤工学会関東支部会員,地盤技術者,学生を対象に,栃木県宇都宮市の市内で建設が進む奈坪川改修工事の一部のトンネル工事を見学させて頂きましたので,その実施内容について報告致します。今回の見学会は,募集開始当初15名の定員を予定し,定員を超えた場合は,抽選する予定でしたが,宇都宮市,清水・中村・大幹・米弥建設共同企業体(以下,清水JV)現場事務所のご厚意によって,21名の見学者を受け入れて頂きました。
2.工事概要
奈坪川は,宇都宮市の市内中心を流れる都市型河川で,昭和61年(1986年)8月の洪水で大きな被害を起こすとともに,平成9年(1997年),13年(2001年),16年(2004年)にも浸水被害を起こしている断面の小さい河川で,平成20年(2008年)に周辺の河川とともに一級河川に指定されています。近年のゲリラ豪雨などの影響で,氾濫が懸念されるため,平成20年度から全長5.52 kmの奈坪川改修工事が進められてきました1)。今回見学させて頂いたトンネル工事は,この河川が市街地を流れる部分約850mの浸水対策のために,地下にトンネル河川を建設されるために行われています。トンネルの土被りは約24mで,水平に広がる凝灰質砂岩の中をロードヘッダーで掘削し,NATM工法により支保を進めています。
このトンネルは,内径4.9m,通水断面積19.9m2の小断面(図-1)であるために,トンネル断面の全面の掘削が一度に行われています。一方で,小規模断面に適する掘削機械の改良・改善の取り組みも行われたようです。この工夫は予想以上に大変だったようです。また,地下水位はトンネル天端から約20m上にあり,多く地下水を含む上層の砂礫層からの漏水を防ぐために,地山への穿孔を伴うロックボルトによる支保を行わない構造となっているのが本工事の特徴です(図-2)。支保工は数値解析などでその支保効果を検証した結果決定し,ロックボルトを施工しない代わりの特殊部材などは用いていないとのことでした。この砂礫層(tg)の透水係数は,2×10-4~10-8 m/s,トンネルを掘削する凝灰質砂岩(Sa)では,1×10-6~10-8 m/sと想定されています。施工は,掘削,ずり出し,吹付コンクリート,H鋼設置,金網設置,吹付コンクリートを1サイクルとする工程で行われています。昼夜各2サイクル,一日4サイクルで,一日あたり4 m程度掘進する工事ということです。トンネル切羽には,剥落を防止するために一部鏡吹付を行い,掘削周辺部の崩落を防ぎ,支保のH鋼を設置しやすくするように施工されていました。吹付コンクリートは高強度コンクリートを使用し,吹き付ける際に急結材を添加し, 3時間で材料強度2 N/mm2が発現する配合となるという説明を受けました。2次覆工は,トンネル断面が小さく,現場が狭いので,トンネル掘削完了後に施工予定で,コンクリートの設計材料強度を30N/mm2とする予定とのことでした。 |