Geo-Kanto2011における現地見学会の報告
「山梨県勝沼堰堤と大日影トンネルに関する現地見学会」

 関東支部 山梨県グループリーダー幹事
山梨大学大学院 後藤 聡

 平成23年11月12日(土)にGeo-Kanto2011の現地見学会が開催されました。午前9時に甲府駅に集合し、5名が参加しましたので報告します。最初の見学地は、日川に架かる祝橋付近のぶどう畑です。日川は大菩薩峠を源にして、甲府盆地の中央で笛吹川に合流する1級河川です。この日川の両岸はぶどう畑が広がっており、これらのぶどう畑の下に「日川水制群」という明治から昭和初期の砂防施設が隠されていることを現地で確認しました。この砂防施設の存在は、18年くらい前に甲州市教育委員会の室伏徹氏により、発見されました。土地の所有者もこの砂防施設の存在を知らなかったようです。砂防施設とワインの関係について、とても興味深い歴史が文献1)に記載されています。
 2番目の見学地は勝沼堰堤(写真1)です。この堰堤は、大正4年から大正6年にかけ、内務省直轄砂防事業として、山梨県甲州市勝沼町上岩崎地先に設置されたものです。日本の砂防堰堤で最初にコンクリートを使用した堰堤ですが、コンクリートは基礎に使われているため現在は見ることができません。この堰堤は、蛇行した河道を石積み堰堤で遮断し、蛇行点に突出した岩盤尾根を掘削して河道とした特徴ある構造です。
 3番目の見学地は大日影トンネル(写真2および3、全長1367.8m)です。このトンネルは、1896年(明治29年)に始まった中央本線八王子駅から甲府駅間建設に伴い掘削され、レンガ積みで造られています。2005年にJR東日本から旧勝沼町へ無償譲渡され、2007年3月に遊歩道として整備されました。今回の見学会では、この遊歩道を深沢口から勝沼口まで歩きました。蒸気機関車の煙突から排煙された煤が黒く付着しており、歴史を感じることができました。(大変残念ですが、現在、漏水と経年劣化への大規模対策を検討するため、平成24年1月18日から平成25年3月31日までの期間トンネルは閉鎖されていますので、歩くことができません。)
 最後にぶどうの丘で、甲府盆地を眺めながら皆で昼食をとり、何人かはワインカーヴ(地下ワイン貯蔵庫)でワインを試飲しました。
 今回の現地見学会開催にご協力いただいた室伏徹氏をはじめ関係者の方々に、深く御礼申し上げます。ありがとうございました。
参考文献 1) 室伏徹(2009):砂防とワイン、河川、8月号、pp.5-9.

    

          写真1 勝沼堰堤の全景               写真2 大日影トンネル(深沢口)

   

          写真3 大日影トンネル(勝沼口)   右側が遊歩道、左側は現在の中央線