「椎坂トンネル見学会の実施報告」

 

佐田建設株式会社 久保田 佳幸

 

 今年度、地盤工学会関東支部群馬グループでは、群馬県発注の椎坂トンネル建設工事現場の見学会を実施しました。そして、この見学会には地盤工学技術者を中心に、県内・県外から40名のご参加をいただきました。
 この椎坂トンネルが建設されている椎坂峠は、関越自動車道沼田ICから片品・尾瀬・日光方面を結ぶ観光ルート上にあり、急坂・急カーブの連続と冬期の積雪・凍結のため難所とされてきました。そして、これら障害を解消するため、椎坂トンネル建設工事が、沼田側と片品側から急ピッチで進められております。
 今回見学会を行なった椎坂トンネルの特徴は、全線に蛇紋岩が分布していることです。蛇紋岩地山のトンネル工事は、大きな地圧作用や切羽崩壊発生など難工事を強いられる事例が多くありました。本工事でも地山の変位抑制対策として、いろいろな補助工法や掘削工法が計画されておりました。
 見学会では、最初に椎坂峠から沼田台地を一望し、湖の地層と扇状地の地層が重なってできた壮大な眺めを味わっていただきました。そして工事現場では、初めに発注者である群馬県沼田土木事務所の村上係長から事業説明があり、その後は片品側と沼田側の工区にて工事概要説明を受けてから、実際に切羽見学をさせていただきました。
 実際の切羽見学では、発破後のズリ処理された切羽で地山の崩落するシーンも見ることができ、蛇紋岩の脆さを直接体験することができました。また、蛇紋岩についてはサンプルが用意されており、超塩基性深成岩の貫入活動と加水変質によってできた蛇紋岩の様子を実際に手に取って見ることができました。
 今回の見学会は、全国でもなかなか見ることのできない地質のトンネル工事であり、特有の地盤に対する技術的工法も知ることができ、我々地盤工学関係者には興味深い工事現場でした。両工区の現場とも現場内の整理整頓が徹底されており、作業関係者の規律正しい対応には見学者一同が感心しておりました。
 地盤学会関東支部群馬グループは、地域特有のテーマや課題に対して見学会や技術者講習会を企画し、地域社会の要請に応える地盤工学の構築とその発展と考えております。今後も、皆様のご指導とご協力をよろしくお願いします。

         

                 写真―1:トンネル坑口     写真―2:蛇紋岩サンプル

         

                 写真―3:トンネル坑内     写真―4:切羽状況