特別講演会 「台湾南部の豪雨による土砂災害について」
主催:(社)地盤工学会関東支部
共催:(社)地盤工学会
関東支部 企画総務グループ 幹事
玉手 聡((独)労働安全衛生総合研究所)
標記の特別講演会が平成21年12月1日(火)の15:00〜17:30に,地盤工学会地下大会議室で開催されました.本講演会は地盤工学会本部の共催を得て,関東支部が主催致しました.テーマは,本年2009年8月に台湾を襲った台風8号(Morakot)による土砂災害についてです.
本講演会は2部構成で実施され,第1部は「地盤工学会2009年Morakot台風による台湾の被害調査に対する災害緊急調査団報告会」,第2部では「GEOTECHNICAL STRUCTURE DAMAGES DURING 2009 TYPHOON MORAKOT」と題する発表が行われた.
当日は36名の参加を頂き,またマスコミ関係(NHK社会部と日経BP社)からの参加もありました.本講演会は参加費無料で実施され,調査団報告書と発表用パワーポイントを綴じた資料が500円で販売されました.
東畑郁生幹事長(東京大学)が開会の挨拶をされ,続いて以下の講演が行われた.(写真-1参照)
第1部:地盤工学会2009年Morakot台風による台湾の
被害調査に対する災害緊急調査団報告
講演1:調査団長安田 進(東京電機大学)
講演2:調査団員塚本良道(東京理科大学)
第2部:特別講演「GEOTECHNICAL STRUCTURE DAMAGES DURING 2009 TYPHOON MORAKOT」
Wei F. Lee博士(国立台湾科技大学 公共資産興設管理研究中心)
第1部の調査団による報告では,はじめに安田団長より,1)調査目的,調査メンバーおよび調査行程,2)調査地域の地形と地質特性,3)被災箇所の調査結果,についての説明があり,続いて,塚本団員が1)被害に関する考察,と2)台湾地盤工学会との合同検討会結果について説明を行った.調査は当初9月に予定されていたが,現地の被害が甚大で復旧が遅れたために,11月に実施された.この台風では3日間で3000mmを超える降雨も記録され,ピーク時の時間雨量は100mmを超えたとのことである.特に「小林村」における大崩壊は衝撃的なものであった.崩壊前日の8月8日に100mm/hrを超える大雨を記録し,翌日の午前6時頃に2.5kmに及ぶ大規模な崩壊が発生した.村の2/3が埋没するとともに,崩土は川をせき止めた.さらに,せき止めによる自然ダムは午前8時頃に決壊した.崩壊と決壊の両方による犠牲者は約400名とも言われているが,現在も正確な数は明らかになっていない.下流の住民の一部40〜50名は,川の水位低下を不審に思い,高台へ避難したために被災を逃れたとのことであった.
第2部ではLee博士より,上記のタイトルで講演が行われた(写真-2参照).台風の通過経路とこれによる降雨状況ならびに,台湾各地における詳細な被害状況が報告された.地すべり,土石流,浸食による崩壊の3つに被害タイプを大別して紹介された.想定を超えた自然現象に対するリスクの考え方や,今後の緊急復旧における課題などについても述べられた.
講演後には活発な質疑が行われた.台風は地震と異なり,ある程度は規模を事前に予測することが可能であるが,今回は多くの犠牲者がでた.危険性を評価して避難させることが重要である.自然災害に対して,構造物をより強固なものにすることも必要だが,限界もある.危険性を判断して,迅速に避難させること,すなわち人命を守るという観点からの取り組みも今後必要であるなどの議論があった.
今回の企画は,学会事務局(戸塚局長,青木さん)に準備,受付,広報活動など多方面でのご尽力を戴きました.実行委員会の一員として本誌面に記してお礼に代えさせて戴きます.