(社)日本地すべり学会関東支部(後援:社団法人地盤工学会)シンポジウムの開催報告
平成21年6月5日(金)に(社)日本地すべり学会関東支部のシンポジウムが開催されました。本シンポジウムは、森林と斜面災害という今日的なテーマとし、(社)地盤工学会の御後援もいただき、広い分野から多くの来場者を迎え盛大に開催されました。ここにその報告を記すとともに関係各位、来場者に御礼を申し上げます。
■ シンポジウムテーマ:森林と斜面災害
(1)日本大学生物資源科学部教授 阿部 和時 「森林の持つ斜面崩壊防止機能」
(2)信州大学農学部教授 北原 曜
「森林根系の崩壊防止機能」−信州大学農学部治山学研究室の森林根系研究成果より−
日時場所:平成21年6月5日(金)13時〜17時 東京大学武田先端知ホール
主催:(社)日本地すべり学会関東支部 後援:(社)地盤工学会関東支部
(1)森林の持つ斜面崩壊防止機能
日本の国土の約70%は急峻な山岳地帯で、梅雨や台風による豪雨や融雪などによって、山崩れ、地すべり、土石流が毎年のように発生し、人命を奪い、家屋や公共施設を破壊する。これを抑制する手立てとして、森林は山地全域を覆い荒廃を防ぐ機能が認識されており、江戸時代には森林伐採を禁止する規則も制定されていた。一方、木材生産や山村地域開発などを行う上では森林伐採も当然必要な行為の一つである。そのため、土砂災害防止と木材生産・森林開発を両立させながら森林経営を実践するためには、時間を変数とし、森林の成長や伐採、更新、保育等の施業によって森林の崩壊防止機能がどのように変化するかを力学的に定量化する手法の開発が要求されている。本講演では、森林の崩壊防止機能に関して、これまでの研究成果の概要と課題を分かり易く、かつ具体的な事例を交えてお話された。
(2)森林根系の崩壊防止機能
森林整備による崩壊防止機能とその限界についてはよく言われているが、一般論的には理解されても、その力学的検討は不充分であり、具体的な森林管理に生かされているとは言い難い。森林根系の崩壊防止機能に関する従来の考え方の問題点として、斜面土層の縦断面は2次元の円弧すべりで考えることが多かった。しかし、崩壊は広がりをもった3次元で発生しており、水平根等も含めて、3次元で根系の崩壊防止機能を正しく評価することが重要である。根系の崩壊防止機能の定量的な把握手法とその評価と、実際にデータを取得する困難さも交えて、崩壊に強い森林作りのあり方を提言された。
写真1 盛況な会場での阿部先生の講演 写真2 根系機能を説明する北原先生の熱弁
(文責:(社)地すべり学会関東支部広報 小野田)