地盤改良及びソイルセメントの技術者講習会

地盤工学会関東支部 群馬県グループ 幹事

久保田 佳幸(佐田建設梶j

今年度、関東支部群馬県グループでは、地盤工学技術の向上と発展による社会資本整備への貢献を目的に、地盤改良をテーマとした技術者講習会を、10月28日(火)に群馬建設会館にて開催しました。当日は県内だけでなく、東京や名古屋からお見えになった方もあり、約50名の受講者に参加していただきました。

この講習会では、平成19年度地盤工学会賞「研究奨励賞」を受賞された群馬大学の半井健一郎先生による「地盤材料とセメント系材料を対象とした統合解析モデルの開発」を特別にご講演していただきました。それに併せて、群馬県グループ幹事3名が、「廃石膏ボードによる地盤改良」、「砂防ソイルセメント」、「住宅基礎の地盤調査・改良」をテーマに研究成果や施工事例を紹介しました。

半井先生の研究内容は、地盤・セメント系材料の物理化学的な材料挙動を統一的に評価できる解析システム構築を目的としたものです。ご講演では、セメント改良土とコンクリートに共通する問題として溶脱劣化を取り上げ、数万年の安定性が要求される放射性廃棄物処分施設の人工バリアを対象とした劣化進行の説明では、あまりの時間的スケールの大きさに驚かされました。地盤と構造物の統合解析を行うことで、構造物劣化には地盤条件が大きく影響することもわかり、地盤改良では数十年〜百年単位の劣化進行となるようです。このように地盤工学とコンクリート工学の融合とも言うべきご講演内容には、受講者全員が新たな工学分野を見た想いでした。

群馬県グループ樋口幹事の発表内容は、廃棄物として処理されていた廃石膏ボードを熱処理することで有用な地盤改良材として再生利用し、これを工事現場で発生する土砂に利用することで現地発生土の再利用も図るというものでした。実際に、「ため池の堤体改修」と「道路路床の改良」の施工事例を紹介し、本工法の有用性・優位性をアピールしました。

同グループ久保田幹事の発表内容は、砂防ソイルセメントの施工事例をメインとしたものであり、配合設計・試験と施工段階の施工・品質管理の重要性をアピールしました。特に、実際の工事段階では、事前の施工、設備及び管理方法の計画・設計が大きな影響力を持っており、各工事関係者協力の必要性もアピールしました。

同グループ櫛谷幹事の発表内容は、日常よく見かける住宅基礎における地盤調査と地盤改良を紹介したものでした。小規模構造物は地盤の評価が難しい分野に対して、簡易な地盤調査方法による経済性等を考慮した地盤改良工法を理論的に説明しました。近年地震災害発生時の住宅地盤崩壊等も多発しており、受講者全員が何らかの意味で興味を持っていた発表内容だったと思いました。

最後に、群馬県グループは今後もこのような技術者講習会を企画し、地盤工学による社会貢献を図りたいと考えておりますので、皆様のご指導とご協力をお願いします。

写真―1:半井先生のご講演  写真―2:講習会会場の全景