工法協会交流会

副幹事長   

北本 幸義(鹿島)

 

 用途や工種が近く技術的に関連の深い工法を有する協会に集まってもらい、学会員を主対象にそれぞれの工法の特徴や留意点を説明いただくとともに、会員サイドからは、日頃より疑問に思っていること,相談したい内容などを協会へ投げかけてもらうという目的で、標記交流会を平成20年9月29日(月)15時から地盤工学会大会議室にて開催した。これは、学会員の半数以上がコンサルタント,ゼネコン,調査会社に所属している現況に鑑み、関東支部としても、従来からの学術的な研究発表の場に留まらず実務に密着した情報収集・交換の場を提供していきたいとの認識に対応したもので、関連する工法を相互に比較することができれば、複雑化・高度化が進む最近の地盤工学的案件に対して、有効かつ合理的な工法の選定や実施に役立つものと期待・企図している。

 アンカー系を対象とした前回に引き続き、第2回目となる今回は、学会員の関心が高い補強盛土系の工法協会に参加を呼びかけ、@日本テールアルメ協会,A多数アンカー式補強土壁協会,BRRR工法協会,Cアデムウォール協会,Dハイビーウォール研究会の5団体に参加をいただいた。事前に受けていた50名を超える参加申込みの中から、当日は、41名の出席となったが、各協会からも複数名の出席があり大会議室もほぼ満席に近い状態となった。

 太田支部長の開催挨拶後、補強材の形態に基づき、金属(@:帯状,A:棒状),ジオテキスタイル(B〜D:面状)の順に12分間ずつ説明を行い、フリーディスカッションによる意見交換を行った。議論の的として、a.材料(補強材と盛土材,壁面材の相性,適用性など),b.設計・施工法(各工法での考え方や根拠など),c.耐久性や維持・管理(近年話題となっている現象や項目への対応など)に分けて議論を進めたが、フロアからは、関東ロームを盛土材とする場合、各工法の適用性や用いるための対策,あるいはその物性評価や管理手法などへの対応,また、変形性に対して各工法ではどの程度の変形量を許容しているのか,あるいはどの程度まで変形が増大すると危険領域に達するのかが質問された。各協会とも類似した回答であったが、工法によって異なる設計や性能評価となっているのが実態であり、盛土の補強効果は盛土材と補強材の相互作用に基づいて発揮されることから、補強材の形態とそれに適用しうる土質との関連によって、極限つり合い法で考えているすべり線の形状や強度の評価方法なども影響を受けるはずである。また、過度な変形が生じれば、当然ながら機能に支障を来たし安定性が損なわれることになる。二の矢,三の矢の質問が飛ばず、深く掘り下げることが不十分であったと思われるとともに、工法選定上の大きな指標の一つといえるコスト的な面での質問も皆無であった。

標記交流会は、一方的な説明を行うのではなく(説明はあくまでも議論を進める上での呼び水)、協会と学会員による双方向の意見交換を目指しており(交流会と銘打っている所以)、フロアからの活発な問いかけがこの場を成り立たせる。今後、別工種の協会を対象に交流会を開催していく予定であるが、参加者におかれては日頃より抱いている考え・疑問の積極的な発言をお願いする次第である。