(社)地盤工学会関東支部 会員サービスグループ幹事
中央大学理工学部 原 忠
(社)地盤工学会関東支部では,平成18年12月2日(土)に第1回学生対抗ソイルタワーコンテストを実施した.本コンテストは,土質力学の専門知識を存分に生かし,与えられた4種類の試料を自由に配合しソイルタワーを作成する学生参加型の行事で,耐荷重(強さ),重量(軽さ),高さ,美しさ(芸術性),プレゼンテーションなどを審査し,総合順位を決定するもので,初年度は5大学8グループが参加し,熱戦が繰り広げられた(写真-1).ソイルタワーの作成には,本大会の審査委員長を務められた太田秀樹教授(東京工業大学)も飛び入りで参加された(写真-2).
写真-1 ソイルタワーコンテスト開催風景
写真-2 太田秀樹審査委員長も飛び入り参加
参加グループには,予めソイルタワーの作成方法や採点基準を記した大会規定を配布したが,タワー作成に用いる用具類はあえて制限を設けなかったため,通常の締固めに用いる鋼製モールドや角材や塩ビ管などを組み合わせた本格的な型枠,さらには円柱棒,空缶を細工した締固め用具など,各グループ独自の道具が持ち込まれた(写真-3).また,いずれの参加者も複数回のトレーニングを重ねており,参加校の威信をかけてコンテストに臨んでいた.
写真-3 参加者手作りの型枠と締固め用具
ソイルタワーには,粒径の大きい礫材を心材に用いたものや,粘性土を補強土のように層状に挟み込んだものなど,評価点を加点すべく様々な工夫が加えられていたが,細粒分の含有による予期せぬ亀裂や,予想を遙かに上回る高含水な材料の取り扱いに苦労する参加者も見られた.これら困難な条件下ではあったが,完成後60kgを上回る耐載荷性を有するソイルタワーもあり,荷重を追加する毎に参加者からは歓声があがった(写真-4).なお,各グループともタワーのコンセプトが比較的明確で,終了までのわずかな時間を利用してタワー側面を化粧したグループも見られた.
写真-4 ソイルタワーへの載荷
コンテスト終了後は直ちに表彰式が行われ,上位3グループと審査員特別賞が発表された(写真-5).初年度入賞グループは表-1に示す4グループである.表彰式後に行われた懇親会では参加者同士の交流も盛んに行われた。
写真-5 表彰式の様子
表-1 入賞グループ一覧
順位 |
学校名 |
参加者氏名 |
1位 |
横浜国立大学 地盤研究室 |
小松 祐子 |
山口 鎮雄 |
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志村 勝宣 |
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2位 |
横浜国立大学 地盤研究室 |
若尾 和俊 |
柴山 華子 |
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玉置 久也 |
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3位 |
中央大学 地盤環境研究室 |
石井 嘉一 |
榎木 亮平 |
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勝亦 徹 |
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審査員特別賞 |
武蔵工業大学 地盤環境工学研究室 |
畔上 洋一 |
小板橋 拓馬 |
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矢作 卓也 |
土質力学を主題としたコンテストは地盤工学会では初の試みであり,材料から準備に至るまで手探りの状態であった.このような条件のもと,半ば見切り発車的にスタートした行事ではあったが,参加者のほとんどが授業で得た基礎知識を生かしながら実際の土に触れる機会を得たことに満足した様子で,若手技術者の交流の場の一つとして継続した開催を希望するグループが複数あった.今後ともこのような若手技術者・学生を主体とした学会行事が,多数の参加校のもと定期的に行われることを期待している.
なお,本コンテストの運営には,日本大学理工学部社会交通工学科地盤工学研究室および武蔵工業大学社会基盤工学科地盤環境工学研究室各位の協力に寄るところが大きい.また,基礎地盤コンサルタンツ(株),佐藤工業(株),前田建設工業(株)には開催に際して多大な協力を得た.末筆ではありますが,ここに記して謝意を表します.
第1回ソイルタワーコンテスト特別審査委員
前田建設工業梶@清水英樹
去る平成18年12月2日(土)、日本大学船橋キャンパスにて行われた地盤工学会関東支部主催の第1回学校対抗ソイルタワーコンテストを見学させていただく機会を得た。5大学8チームの参加を得て行われたコンテストは、参加者各位の活気と熱意により競技時間の2時間が非常に短く感じられるほどに有意義なひと時となった。ここでは各位への感謝の意味も込めて、僭越ながらの感想を述べさせていただきたく思う。
まず、最初に感じたのは“まじめな遊び心”ともいうべき参加者各位の活気であった。勝負に対する真剣さはもちろんのこと、童心に帰って“土いじり”する楽しさが見ている我々にもひしひしと伝わってきた。審査委員長を務められた東工大の太田秀樹先生が思わず飛び入り参加されたお気持ちが非常によく分かる。
次に、本コンテストの規定を含めた企画が非常によく練られたものであると感心させられた。審査項目・使用材料の選定から競技時間やタワー作成規定の細部にまで、周到な配慮がなされていると感じた。特に大会規定に必要以上の制約を加えずに自由度を持たせることで、学生の発想力を上手く引き出すことに成功した点が見事であった。企画に携われた事務局の諸先生方の発想に敬服するとともに、その後の運営・準備に膨大な議論と労を重ねられたであろうことが想像に難くない。
今大会は記念すべき第1回大会であるがゆえに、学生諸氏のコンテストに対する受け止め方や思い入れに若干の開きがあったかと思う。それが結果的に事前準備の差、つまりスタートにおける立ち位置の差となって表れ、その差がそのまま勝敗を分けてしまった形になった。したがって、大会の成り行きに対し共通の認識ができた次大会では、恐らくスタート位置の違いは解消され、さらに白熱した競技が期待できるものと考える。さらに、大会当日まで明らかにされないサプライズドな材料や規定を盛り込むことで瞬時の判断による応用能力なしには勝てない仕組みづくりなど、大会の内容にさらなる幅を持たせることも可能かと思われる。
本大会に敗れた学生諸氏の中には、すでに次大会へのリベンジを期する発言も聞かれ、当然のごとく継続的な開催を望む声も多かった。事務局のご苦労も多いことと拝察するが、是非とも次大会の開催をお願いするとともに、微力ながらのご支援もお約束しながら今大会の成功に敬意を表したい。