H18.0616

特別講演会:「新潟県中越地震の斜面災害の特徴と今後への対応,
〜我が国最大級の手堀トンネル〜中山隧道の歴史・新潟県中越地震体験談」

 

 

 平成18年6月16日15時,学会会議室にて標記の特別講演会が開催されました.講演会は2部構成で,最初に中央大学教授の國生剛治先生から,中越地震の斜面災害と今後の対応について講演いただきました.続いて第2部で,中越地震の被災地である旧山古志村にお住まいの小川晴司様から,震源地近傍の旧山古志村小松倉地区に位置する「中山隧道」の歴史や,中越地震の体験等を講演いただきました.参加者は,石原研而支部長をはじめ,藤田圭一元会長,芝浦工業大学名誉教授足立格一郎先生,東洋大学名誉教授赤木俊允先生他68名と多士済々の顔ぶれで,大変な盛会でした.

國生先生のご講演では,何度となく現場を訪れ調査された結果を基に,多くの斜面災害事例をメカニズムから分類し,写真を使って丁寧に解説されました.さらに,中越地震のような山間地直下地震による被害はこれまでしばしば経験してきたにも関わらず,必ずしも十分にその経験が伝達されてこなかったことを踏まえ,今後は斜面災害のデータベース整備,災害予測法の開発の必要性が訴えられました.この分野の技術者のみならず地盤工学に携わる技術者にとって大変貴重な内容のご講演でした.

続いて,小川晴司様のご講演に先だって,「中山隧道」の概要について中央大学の原忠先生から説明がありました.この隧道は,山里深い旧山古志村小松倉地区と山を隔てて隣接する広神村とを結ぶ,877mの我が国最大級の手掘り隧道です.昭和8年から24年までの16年もの歳月をかけて完成しました.

小川晴治様は,幼い頃この隧道工事を手伝った経験をお持ちで,現在手掘中山隧道保存会で隧道インストラクターをされております.隧道工事に関わる小松倉地区の皆さんのご苦労と,当時のつるはしによるトンネル掘削の様子,掘削方向の出し方,勾配を確保する方法等,当時の皆さんの知恵と工夫について,訥々とかつしっかりとした口調でご講演されました.藤田先生,足立先生をはじめとする諸先生との間で交わされる質問・回答のやりとりが繰り返されるなか,和気藹々とした雰囲気で講演が終了しました.最後に手掘り中山隧道の記録映画「掘るまいか」が上映され,あらためて,当時のご苦労が伝わってまいりました.

最後に,貴重な講演会を企画・実施していただきました國生先生,原先生,また貴重なお話を提供していただきました小川晴治様に対し深く御礼申し上げます。

(文責:佐藤 博 東京電力(株))



小川清司氏講演の様子

足立先生とのやり取りの様子