薬液注入工法に用いられる注入材には溶液型と懸濁型があり,さらにその中にもアルカリ系や非アルカリ系シリカゾル,活性シリカコロイドなどの多岐にわたる分類がある.このように多くの種類の注入材がある中で,発注者および施工者は改良目的に応じて注入材を選定することになる.
現在,社会資本においては安全・安心の確保と長寿命化・ライフサイクルコストの縮減を目的として維持補修に整備の軸足を移しつつあるが,既設構造物が近接する狭隘場所や施設を共用しながら施工できる薬液注入工法はこのような維持管理時代に大きく貢献できる工法の一つと目されている.
しかしながら,注入工法が多様である上に,注入材の耐久性や環境性に関する統一された見解がないために,工法・材料の選択に苦慮することが少なくない.薬液注入工法がライフサイクルコストとそのパフォーマンスに注目する維持管理時代の要請に応えるためには,耐久性・環境保全性・利便性・施工性などに関する統一された指標や思想,それらに基づく工法の分類が必要であると思われる.また,このような社会の要請に適うためにも,薬液工法の課題や今後の開発の方向性について今一度整理する必要があるだろう.
本小委員会は,薬液注入工法に関して多くの経験を有する方やその将来性を高く評価する方にご参集いただき,学会活動として主として学術的な観点から上記の問題解決に向けた一歩を踏み出すものである. |