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杭は古くから構造物を支持する基礎として使用され,その支持機構などに関する研究も多くおこなわれてきている.しかし,その多くは単独の杭を対象とした研究であり,本研究委員会が対象としている群杭については研究が進んでいるとは言い難い.群杭とは多くの杭を統合して一つの基礎支える基礎形式であり,土木構造物をはじめ多くの構造物で採用されている基礎形式である.杭自体の働きが構造物の重量等の荷重を地盤へ伝達することであることから,狭い地盤空間に多くの杭が存在する場合には杭と地盤および杭同士の相互作用が働き,杭の支持機構も単独杭の場合と異なったものになることは想像に難くなく,その支持機構を解明することは群杭基礎の合理的な設計などをおこなう上で有益なものになると思われる.しかし,群杭の挙動に関する科学的・実証的な研究を行うには群杭形式を再現できる模型実験などをおこなうことが効果的であるが,そのためには群杭模型の載荷が可能な大規模な土槽実験装置が必要になるなど学会活動を通じて研究を推進するには経済的および労力的な障害が大きい.
一方,杭という基礎形式は建築と土木両方の分野で広く利用されている基礎構造でありながら,両分野の技術者同士の交流,情報交換が十分であるとは言い切れず,そのような状況は近年深まっているようにも感じられる.地盤と構造物の相互作用という観点からすれば杭に関する諸現象は全く同根であり,両分野で情報交換を緊密に行い,お互い良いところを吸収してそれぞれの発展を期することは有益である.また,それこそが地盤工学会設立本来の目的にも適うことである.
以上のような背景から「群杭挙動の実証的研究委員会」が2009年6月〜2012年3月の期間で設立され,群杭の支持力機構を科学的・実証的に検証することを目的として活動してきた.上記委員会では,土木と建築,さらに農村工学,応用地質学など多くの分野で杭基礎の実態に興味を持つ技術者を集めて検討がおこなわれるとともに,実験行為は東京大学の研究と教育の活動として行なうことにより,学会活動として実験を伴う研究を推進することの障害を解消してきた.
本研究委員会では「群杭挙動の実証的研究委員会」の成果を継承し,さらに実験や数値解析をおこなって検討・分析を進めることによって成果の信頼性・普遍性を更に高め,広く世に普及させることを主目的とする.なお,実験行為は東京大学の研究と教育の活動としておこない,委員会は実験に対する助言や実験結果の検討,および必要かつ可能な範囲での数値解析等を実施する.
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