以前より関東地域で検討の必要性が指摘されてきた課題の一つに“火山由来地盤と災害との関わり”の問題がある。関東平野の半分以上を占める台地の表面には火山灰由来の赤土すなわち関東ローム層が分布するが,それは富士山,八ヶ岳,浅間山,赤城山,那須岳といった複数の火山に由来しており,一概にローム層と言ってもその種類は様々である。例えば,富士山から遠く離れた東京以東に堆積するローム層は細粒分が多く粘土質傾向が強いなど,堆積や風化作用の受け方により,地域ごとにやや異なった力学的性質を有することが知られている。
また,ローム層をなす土は粒径が比較的細かい割に透水性が良く,粒子間の結合が強いため一般に支持力が良好な地盤を形成することが多い。しかし,降雨などで一度乱されると極端に軟弱化する性質を有しているため,盛土材料として取り扱う場合などに問題となることがあり,以前よりその力学特性については多くの研究が行われてきた。
関東地域で広く災害防止に携わる官民の技術者,火山由来地盤について造詣の深い専門家などを中心とした標記の研究委員会を設立し,関東地域で身近に広く存在する関東ローム層を中心とした火山由来地盤の性質を理解し,それに関連する災害事例を整理することは,同地盤で特徴的に発生する種々の災害現象を防ぐために極めて有効である。また,関東地方の種々の火山灰由来土の地域特性を整理することは,地域土の性質を反映したより合理的な技術開発に大いに貢献すると考えられる。これらはいずれも地域社会へ技術啓蒙を行うことを旨とする学会支部の精神に適うものである。
以上の視点より,同委員会の設立について,学会関東支部へ提案する次第である。 |