1.地盤情報共有データベースの必要性
地盤は国土そのものであり,国民の共有財産である社会基盤構造物(インフラストラクチャー)の基盤である.したがって,地盤に関わる情報(以後,地盤情報と称す)は,本来,一部の組織や個人が専有すべきものではなく,社会全体で共有する財産であると考えられる.このため,地盤情報は幅広く有効に利用・活用することが望まれる.また、地盤情報を得るために行う地盤調査は,多大な経費と時間を要するため地盤情報を広く一般に公開することはコストの縮減にも寄与するものである.共有された地盤情報が社会に与える便益には,さまざまなものがある.例えば,過去の調査・試験の結果を利用することにより,建設時に利用できる地盤情報の精度向上や維持管理コストの低減が期待できる.また,地球科学系分野の学術・研究や地盤工学分野の技術開発の発展に大いに貢献し,防災力の向上や国土管理の高度化を図ることができる.さらに,公開された地盤情報は産業の発達にも寄与するであろう.さらに,地盤情報は,システムの利便性,情報の包括性や信頼性,運用・管理の効率が格段に向上することを考えるとばらばらに管理されたデータとして用いるよりも,集約して一元的に管理されたデータベース(以後,DBと称す)として用いるメリットが非常に大きい.例えば,信頼性が高いハザードマップは,広域を包括的にカバーする地盤情報DBに基づいて作成することが必須となっている.
2.関東地域の地盤情報共有データベースの現状とデータベース統合化の必要性
このように地盤情報共有DBのメリットが非常に大きいことから,公的機関や民間会社の協力を得て,業界団体や学会組織を通じて地盤情報共有DBを構築する努力がさまざまな地方・地区でなされてきた.しかし,関東地区においては,公的機関や民間企業等が地盤情報を個別に保管しており,関東全域をカバーする状況にないだけでなく,情報公開の範囲も限定されている.たとえば,東京都土木技術センターの東京都地盤情報システム,千葉県環境生活部の千葉県環境インフォメーションバンク,横浜市環境科学研究所の横浜市地盤データなどが関東地区の代表的なDBであるが,これらのデータは共有された一つのDBとはなっていない.関東地方は,人口の集中およびインフラ(社会基盤)の集積が特に進んだ我が国の経済・産業・政治の中心であること,また,関東平野と周辺の山岳地域からなるまとまりのある地質構造から形成されていることを考慮するならば,関東全域をカバーする包括的な地盤情報DBの構築は,広く社会全体で有効に活用される環境を提供できるとともに、個々の業務においても、高密度・高信頼度の地盤情報として利用できると考える。すなわち、これら分散したDBを統合化・連携化を図り共有化データベースを構築することは、地域社会への還元と同時に、市民の安全・安心な暮らしに大きく貢献できるものである。
3.研究委員会の設立
以上のような背景や必要性から,地盤工学会関東支部では,関東地域における地盤情報データベースを構築して,広く学会員および一般の方に公開できるように以下の項目を検討するための表記研究委員会を設立することとする。
平成18年5月〜平成20年3月
各WGの活動を委員会でとりまとめ、「関東の地盤」の出版,付録として地盤情報閲覧のためのDVDを添付する予定である。講習会を開催予定。
■グループ役員構成
※H22新任