【既存地下構造物の耐衝撃性評価手法と地盤補強技術に関する検討委員会】
■趣旨:国際情勢が混迷の度を深める中、我が国に対する武力攻撃の可能性が否定できない状況が生まれている。攻撃の企図を宣揚する外国政府も存在する。そのなかで我が国が一貫して平和維持を主張することには大きな意味がある。しかし同時に万一に備え、最低限でも国民の生命だけは護る努力をしておくことは、合理的な政策判断である。この方針に即し、すでに政府や大都市を抱える地方自治体では、努力が始まっている。本年末には、有識者会議の意見もまとまって公表される見通しである。
しかし、政策的議論に比べて技術的検討は、あまり進んでいない。大都市住民の生命を護るためには百万人単位の規模のシェルターが必要と考えざるを得ないが、それを限られた時間にどこにどうやって整備するのか、確たる見通しが無い。最も現実的と思われるのは、既存の地下構造物に退避機能を付加することであろう。たとえば第二次大戦中のロンドンでは、地下鉄駅が避難所(シェルター)の役割を果たした。大型ビルディングの地下室にも同様な機能が期待できるかもしれない。ただし、シェルターに水食糧を備蓄したりトイレを設置したりするだけでは不十分である。なによりも、爆発という衝撃荷重に耐える安全性能の付与が必須である。しかし地下鉄や地下室など既存の地下構造物を対象としたこの方面の技術検討は、いまだに進んでいない。
本検討委員会で扱うテーマは、既存地下構造物を主たる対象として、1)爆発衝撃荷重に対する地下構造物の動的挙動および被害程度の評価方法と、2)安全性不足と判断された場合の当該地下構造物の補強技術の開発である。シェルターの安全性を確保するためには、地下構造物躯体そのものの耐久性と、周辺地盤の動的強度および振動減衰性能が重要である。ここで地盤構造物系の動的解析技術が重要であることは申すまでもない。そして2)で補強に資する技術は、構造的補強と地盤改良(既設構造物周辺地盤への薬液注入による強化や減衰性能の高い物質の挿入)であろう。
以上をまとめると、我が国周辺の国際情勢を鑑みて、専守防衛の立場から国民の命を他国の攻撃から護るためのシェルターが重要であること、国内的にもこの重要性が急速に認められつつあって国や自治体で政策的動きが始まっていること、純粋技術的にはいまだ十分な検討がなされていないこと、シェルター構築と性能評価は地盤工学が最も得意とするテーマであることとなる。
■活動状況
2024年度(R6) | ||
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