大規模地震,豪雨や巨大台風などに対する防災・減災を目的に,地盤構造物の設計・施工法が検討されてきた.それにより生み出された技術に対する設計・施工法は,標準的な要求性能や適用箇所を想定してマニュアル化され,対策技術の普及に役立ってきた.
これまで大きな役割を果たしてきた防災・減災のための技術の多くは,高速道路や新幹線の建設,下水道や公園の整備など効率改善や環境改善を目論んだ「効率型」の業を対象にしている.現在,社会資本整備はそのような「効率型」事業から,環境整備,都市再開発,景観改善といった施設の質を一層よくするための「高質化型」事業や,既存の施設の維持・補修や改修・改築を目的とした「更新型」事業に急速にシフトしつつある.このような社会基盤整備の質的変化に応じるためには,防災・減災のための地盤構造物の設計・施工法を,個々の特殊な条件や地域性に対して柔軟に対応できるものに更新する必要がある.
関東地域には,多くの主要道路や非常に密な鉄道網,重要な河川があり,その防災・減災対策においては,地盤条件を含め他の地域に見られない特殊事情が多い.関東地域で広く減災・災害防止に携わる官民の技術者,地盤構造物の設計・施工法に造詣の深い専門家などを中心に標記の研究委員会を設立し,現行の地盤構造物の設計・施工法を用いて,地域特有の要求性能や地盤条件に起因する工学的課題に対応する際に生じる問題について,課題を整理し解決するための提言をまとめることは,関東地域の防災・減災に大きく貢献すると考えられる.
以上の視点より,同委員会の設立について,学会関東支部へ提案する次第である. |