「日本原子力研究開発機構 東海研究開発センター及びJ-PARC」見学会報告

地盤工学会関東支部
茨城県グループ

 平成24年12月12日(水)13:00~16:30、茨城県東海村の独立行政法人日本原子力研究開発機構 東海研究開発センター及びJ-PARCで見学会を開催しました。関東支部地域活動グループ・茨城県グループでは、恒例の催しとして、県内の研究機関を見学する「研究所めぐり」を企画・運営しており、今回で7回目の開催となりました。
 当日は天気にも恵まれ、21名(茨城県グループ事務局4名含む)の方々にご参加いただきました。以下、見学会の様子をご報告します。
見学会スケジュール
(1)東海研究開発センター 核燃料サイクル工学研究所 概要説明
(2)地層処分基盤研究施設(エントリー)見学
(3)地層処分放射化学研究施設(クオリティ)見学
(4)J-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)大強度陽子加速器施設 概要説明
(5)物質・生命科学実験施設 見学
 はじめに東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所の地層処分基盤研究施設内の一室に案内して頂き、当研究所の事業概況をご説明頂きました。核燃料サイクル工学研究所は、約110万m3(約33万坪)の敷地面積を有し、約2100名(うち職員は約840名)の従業員を抱える非常に大規模な機関となっております。昭和32年6月に原子燃料公社東海製錬所(人形峠鉱業所の付属製錬所として発足)から組織としてスタートし、昭和42年10月、動力炉・核燃料開発事業団東海事業所に、平成10年10月核燃料サイクル開発機構東海事業所に改組し、平成17年10月に現在の独立行政法人日本原子力研究開発機構東海研究センター核燃料サイクル工学研究所となりました。
 当研究所では使用済燃料の再処理技術の研究・開発や、再処理の過程で回収されたプルトニウムを使用し、「もんじゅ」等高速増殖炉で用いるプルトニウム・ウラン混合酸化物燃料に係る技術開発に取り組んでいます。また使用済燃料の再処理によって発生する高レベル放射性廃棄物や、原子力施設の運転、解体などによって発生する低レベル放射性廃棄物を、その性質や放射能のレベルに応じ、安全かつ合理的に処理、処分を行うための研究・開発も行っています。
 その他、当研究所の東北地方太平洋沖地震時の被災状況や復旧状況もご説明頂きました。重要な施設なため施設自体に大きな損傷はなかったようですが、施設周辺(外壁等)や保全区域内道路に損傷が発生し、現在も修復作業中の箇所もあるようです。また福島第一原子力発電所の事故に対応すべく、燃料プール内の燃料の性状把握・取り出し・保管・処理に必要となる技術、復旧に必要な遠隔技術に関する試験検討を行っており、併せて福島住民のホールボディ検査や土壌等の放射線測定、放射線への疑問に答えるなど精力的に活動しているそうです。
 次いで地層処分基盤研究施設(エントリー)、地層処分放射化学研究施設(クオリティ)内を案内して頂きました。機密の関係から写真撮影ができませんでしたが、地層処分基盤研究施設は、原子力機構の地層処分研究を通じて得られる成果を集約し、地層処分の技術基盤を確立していく役割を持つ施設で、放射性物質を用いずに地下深部の環境を模擬した様々な要素試験等を行うことができるとともに、これらの試験によって得られたデータに基づいて数万年後の変化をコンピューターで予測できる設備等が備えられていました(施設見学の後、300m以深に処分された放射性廃棄物の廃液等の拡散シミュレーションや地下施設のイメージ映像を見せて頂きました)。地層処分放射化学研究施設は、地下深部の環境を模擬した条件における放射性物質の化学特性や移行挙動に関する基礎データ等を取得するための施設で、この施設で得られるデータは、放射性廃棄物処分の実施主体が処分事業を推進し、国が安全規制を進める上で役立てられています。この施設は、地下数100メートルより深い地層中で想定される酸素の少ない化学的な環境条件を実現できる雰囲気制御グローブボックス設備を備えるとともに、ごくわずかな放射性物質が付着した岩石や放射性物質が溶け込んだ溶液等を観察し、分析するための高性能の分析機器を設置しています。
 その後、J-PARCに移動し、施設の概要を説明して頂きました(写真1、2)。J-PARCは日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で運営している世界最高性能の研究施設で、ここでは宇宙誕生の謎探求から医薬品の開発研究まで、幅広い分野の研究が行われています。心臓となる加速器は、1台数トンから数十トンにもなる大きな電磁石を300台以上使用し、その高いエネルギーにより陽子ビーム(数兆個から数十兆個の陽子の塊)を光速近くまで加速させることができるものです。光速近くまで加速した陽子ビームを原子核に衝突させ、「核破砕反応」により発生した中性子や中間子、ニュートリノなどの二次粒子を種々の最先端科学研究に利用するそうです。
 実際に二次粒子を取り出すのに利用するビームラインという装置を見せて頂きました(写真3)。広い敷地内に整然と装置が並び、我々土木技術者にとって新鮮で、世界最先端の技術に触れられ大変貴重な場をご提供頂きました。
最後に、見学会を快く受け入れ、かつ貴重な体験をさせていただき、運営にご尽力くださいました東海研究開発センター及びJ-PARCセンターの皆さまに厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

20121212.jpg