野外巡検「さいたま市南部の地形・地質,防災と歴史」開催報告

地盤工学会関東支部埼玉県グループ幹事 
埼玉大学 橘 伸也

 関東支部埼玉県グループでは,埼玉県の山地・台地・平地といった多彩な地形を工学的な観点や防災面も踏まえながら見て歩く企画の第一弾として,平成24年11月10日(土)にさいたま市南部での野外巡検を開催しました。
 爽やかな秋空の下,講師の先生と引率の埼玉県グループメンバーを含めた22名が,約11kmのコースを巡り,随時,講師の上野将司様(応用地質株式会社)から説明をいただきました。一行は,JR中浦和駅を出発し,近くを流れる鴻沼川にて,近辺の地形と河川改修工事に纏わる地盤沈下について説明を受けました。続いて,別所沼,白幡沼へと歩き,荒川流域における支谷閉塞低地の成り立ちを学びました。このあたりは大宮台地の縁に位置し,広げた手を大宮台地に見立てたならば,指と指の間にこれらの沼があることになります。したがって,別所沼から白幡沼へは指を一本跨ぐような移動となり,身をもって起伏に富んだ地形を体験できることができました。この後,JR武蔵浦和駅からJR南浦和駅へ電車に乗って移動となりますが,高架駅である両駅の間にトンネルがあり,車窓からも地形の変化を確認することができました。JR南浦和駅下車後には,藤右衛門川へと向かい,しばらく川沿いを歩きます。藤右衛門川には護岸の変位を抑制する梁が設けられており,また近辺には,地盤沈下を確認できる箇所もあったことから,周辺の地盤の性質を窺い知ることができました。
 上谷調整池に着いた一行は,芝生の上で昼食をとりました。普段,ここはグラウンドとして使われており,この日も少年たちがサッカーをしていましたが,藤右衛門川が増水したときには内水氾濫を防ぐ役割を担います。午後からは,見沼代用水西縁に沿って歩きました。この用水は,江戸時代に利根川から水を引くために造られた灌漑用水で,我々はちょうど用水の終点から上流に向かって歩くことになりました。大宮台地の縁を沿うように用水が造られているため,流路は蛇行しています。途中,秋に花を咲かせる桜が見頃になっており,紅葉とともに季節の移ろいを楽しむこともできました。しばらく歩き,見沼通船堀にて舟運と通船の仕組について説明をいただいた後,JR東浦和駅にて巡検は終了,一行は解散いたしました。
 参加いただいた方々からは今回の行事について好評の声もいただき,盛況のうちに巡検を終えることが出来ました。文頭で「第一弾」と記したように,今後もこのような企画を立てたいと思っている次第です。例えば,映画「のぼうの城」の舞台である埼玉県行田市にて石田堤や忍城などを訪ね歩くのはどうかなどと思案しています。引き続き,魅力ある行事を企画して参りますので,是非ご参加ください。
 末筆になりますが,この行事の企画から当日の案内までご協力をいただきました上野将司様に厚くお礼を申し上げます。

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