「新三国トンネル工事の見学会」開催報告歩

地盤工学会関東支部 群馬県グループ
幹事 久保田 佳幸(佐田建設(株))

 地盤工学会関東支部群馬県グループは、平成30年7月10日(火)に新三国トンネル工事の現場見学会を開催しました。本見学会は、掘削中のトンネル現場が見られる貴重な見学会であり、県内・外から官庁・企業・学生を合わせて39名の参加者がありました。
 現在供用中の三国トンネルは、関東と北陸を結ぶ国道17号で重要な役割を担ってきました。しかし、完成から60年以上が経過して老朽化が進行し、特に酸性湧水によるトンネル覆工の劣化は覆工増厚補修で内空断面を縮小させ、大型車同士の通行に支障をきたしています。
 これらの問題を解決するために計画されたのが新三国トンネルであり、昨年8月に掘削が開始され、現在は本格的にトンネル掘削が進行しています。
 現場見学会では、国土交通省関東地方整備局高崎河川国道事務所の田村様より工事の概要を説明していただき、具体的な工事内容については株式会社フジタ(首都圏土木支店)の現場担当者に、現場を見ながら説明していただきました。
 本トンネルの地質は、泥岩(赤谷層)にヒン岩が貫入した地山であり、湧水量も多く、数カ所で断層やせん断帯の存在が予想されています。また、この地山は熱水変質を受け、重金属を溶出しやすい特性を有しており、トンネルの掘削ズリから重金属が溶出する可能性もあります。そのため、掘削ズリの埋立整備場では、遮水シートによる封じ込めと処理施設による浸出水処理も行っており、環境面でも十分な対応が実施されていました。
本トンネルの掘削作業では、この地山は持つ独特な現場条件に対応できるように、以下のような施工機械設備や施工方法が導入されており、技術開発力と施工技術の高さを実感しました。
 ①削孔位置が自動に制御できるジャンボドリル
 ②ジャンボドリルの削孔データから切羽前方の地質状況を予測する前方探査技術
 ③クラッシャーで破砕した岩塊を連続ベルトコンベアで運搬するズリ出しシステム
 ④酸性水への抵抗力を高めた耐酸性型ロックボルト
 ⑤覆工コンクリートへの酸性地下水の影響を防止する地下排水工
 ⑥止水機能を高める厚さ2mmの防水シート
 ⑦止水性能向上を図るトンネルライニング工法、
トンネル掘削工事は、限られた場所と時でしか見学することができず、今回の見学会は大変貴重な企画であったと思いました。地盤工学会関東支部群馬県グループは、今後もこのような見学会や技術講習会を企画しますので、皆様のご参加とご協力をお願いします。
 最後に、今回の見学会は国土交通省関東地方整備局高崎河川国道事務所と株式会社フジタ様のご支援とご協力がなければ、実現することはできませんでした。この場をお借りしてお礼を申し上げます。

写真-1 新三国トンネル坑口部(新潟側)

写真-2 トンネルズリ埋立整備場