地盤工学会関東支部栃木県グループ勉強会
~杭基礎・地盤改良工事の適切な設計・施工を確保するために~ 開催報告

関東支部 栃木県グループ
幹事 清木 隆文(宇都宮大学)

 1.はじめに
 平成28年度の地盤工学会関東支部栃木県グループ主催の勉強会は,宇都宮市東市民活動センターの第1学習室および創作室で2月1日(水)の午後から開催しました.関東圏以外からの参加者も含め,55名の方にご参加頂きました.勉強会の開催に際して,栃木県グループリーダー幹事の西村 友良先生(足利工業大学創生工学科建築・社会基盤学系 教授)から開会の挨拶を頂き,今回の講師の先生方からの話題を日常の業務に役立てて頂きたいという主旨のお話を頂きました.
 2.勉強会の概要
話題提供1:「罪つくりな杭をなくすために」 桑原 文夫氏 (パイルフォーラム株式会社 取締役副社長)から,杭を施工した場合に問題が起こる原因とその対策について話題の提供がありました(写真-1).杭施工業者が杭施工を単なる地形(ちぎょう)として施工だけに徹することなく,構造物の施工精度も考慮した施工が期待されることなどが示唆されました.
話題提供2:「杭の支持層確認のための新技術例(その1) 回転打撃ドリルによる支持層確認(MWD検層)」 武居 幸次郎氏 (鹿島建設株式会社)から回転打撃ドリルの仕事量を確認し,N値の分布と比較することで,先行的に地盤の状況を把握する事例について説明をいただきました.ボーリング調査の実施結果を補足する有力な手法であることが伺われました.参加者(写真-2)からは,この手法に対する適用例など,質問が多く寄せられました.
話題提供3:「杭の支持層確認のための新技術例(その2) 埋込み杭の支持層確認装置」 木谷好伸(三谷セキサン株式会社)から,現場打ち杭の施工に伴い,支持層を確認する手法について,説明が行われました.日々の施工データの管理の大切さ,支持層があることが前提で,仮に杭が設計どおりに施工が行われ,杭が計画どおりの深度で支持層に達しない場合でもこれは施工をする業者の責任ではないので,自信を持って工事をすすめる気概に関するお話が印象的でした.
話題提供4:「地盤改良工事における施工不良」林 健太郎 (関東支部評議員兼栃木県グループ幹事,五洋建設株式会社 技術研究所副所長)から,最近発生した地盤改良工事の施工不良について調査をすすめられた結果から,施工技術の問題点,会社内の体制や問題など丁寧に説明されました.今回の調査を通して得られた教訓として,上司から部下に至るまで,意見を言いやすい風通しの良い組織をつくる事が,今回の施工不良を防ぐために,重要であるというお話は,どの分野や機関にも共通して役立つ重要なこととして,考えさせられました.
 3.おわりに
 この度の勉強会は,関東圏以外からの出席者も多く得て終了しました.勉強会の後,宇都宮市内に会場を移し,講師の先生を囲んでの意見交換会を開催しました.この度の勉強会で紹介された杭基礎や地盤改良の実情からその技術者倫理向上のためのあり方は,地盤工学に限らず,組織づくりなど,幅広い課題の対応に通じるものとして,大変勉強になるものとなりました.

        

写真-1 講師による講演の様子

写真-2 勉強会参加者の聴講風景

 アンケート回答 [回答者数28名]
Q1.本日の講演会について、ご感想をお聞かせください。

回答数
割合
(1)たいへん良かった
20
 71.4%
(2)まずまずだった
8

 28.6%

(3)期待ほどではなかった
0
 0%
(4)期待はずれであった
0
 0%
(5)その他
0
 0%
   無回答
0
 0%


Q2.本日の講演会のなかで、特に参考になったものをお聞かせください。
(1)『『罪つくりな杭をなくすために』』講師:パイルフォーラム株式会社 取締役副社長 桑原 文夫 氏
  ・地盤調査の重要性とその方法、範囲
  ・モラルハザードの問題
  ・杭の設計、施工全般について理解が進んだ
  ・既存杭の撤去後の処理の重要性
  ・杭工法の専門技術を得られて良かった
  ・幅広い情報を教えてもらい、知見を広げられて良かった
  ・スライムの話は興味深かった
  ・地盤調査技術者として、設計・施工に役立つ資料の提供に努めており、認識の違いがあることは個人的には
   残念だった
  ・支持層への未到達、施工不良について
  ・発注者・施工者・設計者の相互理解
  ・各立場がお互いの考えを共有することが重要
  ・調査の不備、杭の本数の目安
  ・場所打ち杭の施工不良
  ・杭は地形か構造部材かの話
(2)『回転打撃ドリルによる支持層確認(MWD検層)』講師:鹿島建設株式会社 武居 幸次郎 氏
  ・新しい工法に対する事例
  ・疑わしきは再確認
  ・精度よく支持層コンターが描けるのが良い
  ・多点調査の必要性と調査効率性
  ・ボーリングの補足工法として画期的 ボーリングだけの断面作成では不足が多いのでMWDを導入し正確なデータ
   を提供したい
  ・工法を実際に使用した事例を知れて良かった
  ・N値との相関が非常に良い
  ・検層費用はかかりそうだがボーリング調査の補間や精査手法として有効性があると確認できた
  ・複雑な地形での調査事例
  ・調査スピードが非常に早いことで工期をできるだけ延ばさずにできることは大きなメリットだと思う
  ・調査の重要性
  ・GC独自の支持地盤管理手法
(3)『埋め込み杭の支持層確認装置』講師:三谷セキサン株式会社 木谷 好伸 氏
  ・実施の施工管理に基づく事例等
  ・施工者の苦労が伝わった
  ・杭造成施工管理として今後普及する新工法だと思う。但し、グラフが複雑で解りにくい気がする。支持層と埋め
   込み深さを主軸として簡素化は可能か?
  ・杭施工者としての取り組み・発注者・設計者などへの思いが聴けて良かった
  ・振動計は参考になった
  ・杭工事における電流値による施工管理システムが理解できた
  ・施工データについて
  ・見える化の重要性
(4)『地盤改良工事における施工不良』講師:関東支部評議員兼栃木県グループ幹事 五洋建設株式会社
   技術研究所副所長 林 健太郎 氏
  ・疑惑の払拭
  ・重機の立ち入りが制限される場所やヤードの確保が難しい所での改良ができるということについて聴けたことが
   参考になった
  ・本音の話が聴けてわかりやすかった
  ・品質確保の重要性
  ・不良事例の対応について
  ・技術者倫理の重要性に共感した
  ・T社の実情について聴けたこと
  ・不具合に対して実際の専門家の意見が聴けて良かった
  ・日本中で報道された不正ニュースを解り易く説明を受け、良く理解できた
  ・最後のまとめがどの組織にも共通して言えること


Q3.今後どのような行事を希望されますか?(複数回答あり)

回答数
割合
(1)講演会
4
 14.3%
(2)勉強会
6
 21.4%
(3)先進事例の発表・展示
6
 21.4%
(4)基礎的な勉強会等
6
 21.4%
(5)その他
0
 0%
   無回答
9
 32.1%

(1)・土質などについて
(2)・土質の試験方法
   ・建築系の内容
   ・施工者の好事例紹介など
   ・防災関係
   ・斜面災害、インフラの長寿命化
(4)・様々なデータ解析実習
   ・探査、検層など非破壊試験について

Q4.(公社)地盤工学会会員になることを検討されますか?

回答数
割合
(1)会員です
11
 39.3%
(2)正会員(個人)になることを検討します
2
 7.1%
(3)法人会員になることを検討します
0
 0%
(5)その他
6
 21.4%
   無回答
9
 32.1%

Q5.地盤工学会関東支部栃木県グループに対するご意見又、今回の講習会でお気づきの点がありましたらお聞かせください。
・大変勉強になった
・不具合事例について詳細な説明をもっと聴きたい
・貴会の益々の発展を期待する
・貴重な勉強会の機会をありがとう
・これくらいのキャパで行うのが良い