平成24年度 地盤工学会 栃木県グループ勉強会
「栃木県の地盤」に関する勉強会 実施報告

主催:地盤工学会関東支部
栃木県グループ

1.はじめに
 栃木県グループでは、毎年、現場見学会、勉強会、講演会を行っています。本年度の勉強会は、東日本大震災発生から1年経ったことから、栃木県内の地盤に関連した震災とわかってきたことについて再確認するとともに、県内の震災が地盤の構造特性と大きく関わりがあることから、栃木県の地質について、専門家から講義をして頂くことになりました。このため,平成24年11月28日に、宇都宮市のとちぎ男女共同参画センター会議室において,「2011年東北地方太平洋沖地震に伴う栃木県内の地盤災害とその結果からわかること」と題して、西村友良先生(地盤工学会関東支部評議員兼栃木県グループリーダー幹事)に講演をお願いしました。さらに、栃木県の地形・地質を継続的に調査・研究し、近年は「宇都宮地域の地質」(5万分の1地質図幅「宇都宮」及び説明書)をまとめられました吉川敏之様(独立行政法人 産業総合技術研究所地質調査情報センター 地質・衛星情報整備企画室 総括主幹)に「栃木県の地質~日本の地質との関連も含めて~」と題して講演して頂きました。この勉強会への参加者は37名でした。
2.2011年東北地方太平洋沖地震に伴う栃木県内の地盤災害とその結果からわかること
 西村先生に、東日本大震災発生時の栃木県内全域の地震動、これに伴う国、県などの道路などの社会資本の被災状況とその復旧の経過について解説をして頂きました(写真-1)。この中で、聴講者の理解を深めるために、地震動の分析方法や関連する用語を補足するなどの工夫をされていました。この度の東北地方太平洋沖地震は、特に鬼怒川河川よりも東側の地域に多くの被害をもたらし、地形や地質との関連が深いことが考察されました。地盤災害を、未然に防ぐために、県内の地盤の特性を捉え、地震被害想定の見直す重要性が強調されました。県内の被災状況とその対策、地盤の特徴に関して聴講者は熱心に聞き入っていました(写真-2)。
 この講演の後、聴講者から同様な地質であっても地域によって震災被害の大きさが全く異なる理由について質問が出ました。

       

         写真-1 西村先生の講演風景               写真-2 勉強会の実施風景

  

         写真-3 吉川様の講演風景              写真-4 質疑応答の様子

3.栃木県の地質~日本の地質との関連も含めて~
 吉川様に、地質学的な用語から、日本の国土、栃木県の地形的な特徴を導入として、栃木県の地質に関する最新の知見を説明して頂きました(写真-3)。栃木県の地形は、平地と山地の標高差が大きく、扇状地が発達し、段丘が発達していることが説明されました。また、栃木県の地質は、宇都宮大学、地質調査所が中心となって古くから調査が進められてきたことが紹介され、比較的多様な地質体からなり、山地に古い時代の地層・岩体が分布し、平地に新しい時代の堆積物が堆積すること、新しい時代の地質は、地形とよく一致する一方で、古い時代の地質は地形と一致していないことが説明されました、栃木県の地質を説明するにあたり、地質について専門外である多くの聴講者が理解しやすいように、複雑な栃木県の地質を九つに簡略化して説明するなどの配慮をして頂きました。これまでの研究からわかったことをもとに、県内の地形・地質情報が図幅などに整理された反面、地下深部の構造など、まだまだ未解明な点が多く、ボーリングや物理探査による調査を通して研究をすすめる必要性が強調されました。
 この講演の後、栃木県内で注目されています活断層の関谷断層の危険性や、県内特定の地域がカルデラ地形である可能性、昨今の脱原発の世論を反映する地熱発電の可能性など、多岐にわたる質問が聴講者から寄せられ(写真-4)、県内の地質・地形とこれに関連した話題に対する興味の高さが伺われました。
4.おわりに
 栃木県グループでは、例年、本部の講習会などのコンテンツを題材として勉強会を開催しています。本年度は、東日本大震災の被災県であることを再認識し、震災と地盤との関係に対する理解を深めるとともに、基本に立ち返るために、この度、栃木県の地質を改めて勉強する機会を設けました。聴講者の多くを占めた土木技術者から見ると、地形・地質は地盤を理解するための基本としれ扱われていますが、その基本にも未解明のことが多々あり、継続的な調査研究が待たれることがわかりました。今回の勉強会を通して、地盤工学は地形・地質の研究分野と連携して、理解を深めて行く必要性を再認識しました。
 栃木県グループでは、会員に広く興味を持たれるテーマを模索し、県内は当然ながら、それ以外の地域の地盤技術者の方々にも喜んで参加して頂けるようなイベントの提案を目指したいと思います。
                                                               文責:清木