森 林 総 合 研 究 所 見 学 会 報 告

関東支部 茨城県グループ

 平成22年12月1日(水)13:00~16:30、茨城県つくば市の森林総合研究所で見学会を開催しました。関東支部地域活動グループ・茨城県グループでは、恒例の催しとして、県内の研究機関を見学する「研究所めぐり」を企画・運営しており、今回で6回目の開催となりました。
 当日は天気にも恵まれ、地盤工学会関東支部長 太田秀樹先生(中央大学教授)を始め14名の方々にご参加いただきました。以下、見学会の様子をご報告します。

 見学会スケジュール
 (1) 森林総合研究所 紹介ビデオ(企画部:佐藤尚氏)
 (2) 土石流に関する実験紹介(治山研究室:岡田康彦氏)
 (3) 温暖化影響実験棟の紹介(樹木生理研究室長:北尾光俊氏)
 (4) 風洞実験施設の紹介(気象害・防災林研究室:野口宏典氏)
 (5) 斜面崩壊実験土層、土石流実験水路の紹介(水土保全研究領域長:落合博貴氏)
 (6) 室内試験室の紹介(水土保全研究領域長:落合博貴氏)

 はじめに森林総合研究所企画部の佐藤氏より、ビデオを使用した当研究所の紹介がなされました。当研究所では森林、林業、木材など多岐にわたる研究がなされ、地球温暖化問題から森林が流域に及ぼす影響、地震による地すべり、木材の品種改良まで幅広い研究課題に取り組んでいることがわかりました。
 その後、治山研究室の岡田氏より、スライドを用いた土石流に関する話題提供がなされました。日本における土石流の災害事例を紹介いただき、また当研究所が所有する大型の実験施設(後述)を用いた土石流実験による、効果的な堰堤に関する研究についてご紹介いただきました。
 次いで、各ご担当の方々に当研究所が所有する実験施設をご案内いただきました。
 樹木生理研究室の北尾氏からは温暖化影響実験棟のご案内をいただきました。ここは温度とCO2濃度が制御可能な実験室を有し、植物の光合成に及ぼす温度・CO2濃度の影響を定量的に調べております。これらの実験により樹木の生理生態的特性(光合成活動、水の利用など)や枝・葉・幹の生産プロセスを解明し、環境の変化が樹木や森林に与える影響を調べております。
 風洞実験施設では気象害・防災林研究室の野口氏に施設のご紹介をいただきました。当施設では風害、飛砂害、雪害等の気象害を防止・軽減するための実験が行われております。この施設は、実際の現象にできるだけ近い現象、あるいは単純化した現象を作り出すことが可能で、物体の前後の空気の流れを把握することができます。
 斜面崩壊実験土層、土石流実験水路は、水土保全研究領域長の落合氏からご説明いただきました。これらの実験施設は林地で発生する崩壊・地すべり、土石流などの発生機構を解明し、土砂災害の防止機能など森林の持つ水土保全機能を十分に発揮させるための研究に役立っております。
 斜面崩壊実験では、土質や含水状態(降雨の条件や地下水位の条件)勾配などを変え、様々な条件で実験することで、斜面崩壊の発生メカニズムを解明していきます。
 また土石流実験水路でも種々の条件で実験を行い、効果的な堰堤の在り方などを調べております。土石流の土質の違い(火山灰や軽石の含有量など)によってその挙動が大きく異なることなど、我々地盤工学分野の者にとっても非常に興味深い内容のお話を聞くことができました。
 その後、落合氏には室内試験室をご案内していただきました。大学の研究室にあるような各種要素試験機から、世界中で採取された土試料など貴重な試料を見せていただきました。
 最後に、見学会を快く受け入れ、かつ貴重な体験をさせていただき、運営にご尽力くださいました落合博貴氏(水土保全研究領域長)をはじめ、森林総合研究所の皆さまに厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。