第10回彩の国市民科学オープンフォーラム開催報告

主催: 埼玉大学地圏科学研究センター
共催: 自然災害研究協議会関東地区部会
(社)地盤工学会関東支部
後援: 埼玉県,さいたま市,埼玉県技術士会
(社)埼玉県建設コンサルタント技術研修協会

埼玉県グループ
橘 伸也・桑野 二郎(埼玉大学)

 平成22年11月29日(月)14:00~17:00,大宮ソニックシティ・国際会議室において,第10回彩の国市民科学オープンフォーラムが開催されました.この行事は,埼玉大学地圏科学研究センターが社会啓発活動の一環として毎年開催しているもので,地盤工学会関東支部も例年,共催参加しています.平成22年度も例年通り,関東支部のメーリングリストでの広報,関係各所への積極的な働きかけ,日経新聞やさいたま市報への掲載を通して,市民ならびに自主防災組織へも積極的に呼びかけたことにより,市民の方々を含め150名にのぼる大勢の方々にご参加をいただきました.
 平成22年度のテーマは,「激甚化・多様化する気象災害に備える」とし,学外から著名な講演者をお呼びしご講演いただくとともに,渡邉センター教授が災害資料センターの資料を解析した結果を報告し,引き続き,パネルディスカッションの時間が設けられました.講演の内容は,下記の通りです.

  1.気象災害の最新事情‐アジアから飛来する汚染物質と温暖化
    元気象研究所地球化学部長・上智大学客員教授 広瀬 勝巳 講師
  2.ゲリラ豪雨災害から命を守る
    富士常葉大学大学院環境防災研究科教授 重川 希志依 講師
  3.埼玉県の中小河川の洪水問題-関東地区災害資料センターの資料分析から
    埼玉大学地圏科学研究センター教授 渡邉 邦夫 講師

 広瀬講師の講演内容は,近年の異常気象(今年の猛暑、集中豪雨の増加)増大を,地球温暖化との関係について考察され,温暖化の主原因とされるCO2の排出増加のみならず,経済活動による様々な汚染物質の放出が,酸性雨,光化学スモッグ,黄砂などの気象に関連した現象を引き起こしており,その影響は国を越えアジア全体に広がっていることを紹介された.また,異常気象のもたらす様々な現象について防災リスク管理の観点から,今後を考えるうえで,異常気象が増加しているという観点からの対処が必要であること,想定しうる事象は必ず生じると考えたほうがよいこと,リストラ(加えて高齢化)により社会が脆弱化していることを考慮する必要があることの3点が強調された.
 重川講師の講演内容は,平成21年山口県防府市の豪雨災害,平成22年静岡県小山町の台風災害などの最近の被災事例に基づき,特にリアルタイムでの情報の収集方法やその整理・記録方法など,実践的な方法が紹介された.これらを通して,災害に対してコミュニティが果たす役割とその可能性について
防災リテラシーの向上という観点からまとめられ,自助・共助・公助が各々機能しなければならないこと,住民も行政も大雨災害から”いのちを守る”ための防災対応能力を身に付けておくことが必要であることが指摘された.そのために,今なにをしておくべきかを示して頂いた.
 渡邉講師の講演内容は,地圏科学研究センターと併設されている関東地区災害資料センターの活動について紹介されるとともに,その資料の一部である埼玉県中川水系工事事務所の多くの報告書を多面的に分析された結果が報告された.特に,厳しい渇水と大降雨という極端な気象が立て続けに起こった昭和33年に焦点を絞り,洪水と渇水時における,埼玉県主要部の特徴である台地と低地との関連,地下水位と地盤との関連,複雑な河川形状との関連などを考察された.埼玉県の都市開発はまだ止まっておらず,洪水対策危険地域は新たに生み出されていることを指摘するとともに,過去の異常な気象によって生じた災害を分析する作業を通して,今後の埼玉県に起こる災害の特性と対策を考えることができることが強調された.
 これらの講演に引き続き行われたパネルディスカッションでは,市民の方々から多くの質問を頂いた.例えば,10年後の気象災害の予測はどのようなものか,大雨の中での避難方法とそのタイミング,豪雨災害と都市化や都市計画との兼ね合いについて,災害弱者と住民の反対運動を伴う施設の地盤条件について,など多岐にわたり,講師の皆様には丁寧に各質問に答えて頂いた.このようなフォーラムを毎年定期的に実施することにより,参加者の意識もかなり向上していきている印象を受けました.
 平成23年度におきましても,同様な彩の国市民科学オープンフォーラムの開催を予定いたしております.今年度も,地盤工学会関東支部のホームページ,あるいはメーリングリストなどを通じて会告をする予定でございます.多数の方々のご参加をお待ちいたしております.

会場の様子

  

         パネルディスカッションでの広瀬・重川両講師      会場からの質疑の様子